現時点で発生すればM8.5程度

今月15日、政府の地震調査委員会は、南海トラフ巨大地震の今後30年以内の発生確率について、昨年まで「70%から80%」としていたものを、今年は「80%程度」に引き上げた計算結果を発表した。

「想定された地震が発生しない限り、発生確率は時間の経過とともに高くなる傾向があり、発生する可能性が急に増したわけではない。

ただ80%程度というのは、いつ地震が起きても不思議ではないという数字だ。引き続き、地震に備えていただきたい」(地震調査委員会)

こう述べていたが、一体どれぐらい鬼気迫ることなのか。そのリスクや対策について、東京大地震研究所の加藤愛太郎教授(地震学)に話を聞いた。

「日本列島の下には、太平洋プレートとフィリピン海プレートという2つのプレートが沈み込んでいます。プレートが沈み込もうとすると、断層の固着により陸地にひずみが蓄積され、ひずみが限界に達すると、断層面でのずれ(地震)が発生し、貯まったひずみのエネルギーを一気に解放します。これが『プレート境界型地震』と言われています。

巨大地震発生域のプレート運動を測定すると、年間4~5㎝のスピードで「ずれ」を蓄積しています。仮に単純計算だと100年で5m分のずれが貯まります。それが一気に跳ね返って地震になるわけです。

今、仮に南海トラフ沿いのプレート境界全域がずれたとすれば、断層の平均のずれは約4m、M8.5程度の地震が襲ってくるでしょう。東日本大震災がM9で、断層のずれは平均約20mでした。もちろん沿岸部では津波の危険性も十分考えられます」(東大・加藤教授、以下同)

内閣府のモデル検討会によると、南海トラフ巨大地震では、九州から関東にかけての広範囲で震度6強以上の被害や、太平洋沿岸の広い地域に10mを超える大津波の襲来が想定されている。

2011年3月11日に発生した「東日本大震災」(写真/shutterstock、以下同)
2011年3月11日に発生した「東日本大震災」(写真/shutterstock、以下同)
甚大な津波被害を巻き起こした東日本大震災
甚大な津波被害を巻き起こした東日本大震災