親が知的障害や精神障害を持っていると子どもを虐待しやすい
こども家庭庁は令和4(2022)年度9月7日、令和4年度の児童相談所による児童虐待相談対応件数(速報値)を公表した。
件数は21万9,170件で、前年度より11,510件(+5.5%)増え、過去最多を更新した。
親に障害がある場合に限っての統計は存在しないものの、こども家庭庁のデータから、虐待の増加傾向がみられる。
アメリカの国立障害児親研究センター(NRCPD)の調査によると、親が障害を抱えている場合、子どもへ虐待のリスクが高まる可能性が指摘されている。
特に、知的障害や精神障害を持つ親は、子育てにおける困難やストレスが増加し、それが虐待の要因となる場合がある。
障害を持つ親は、就労が難しい場合が多く、経済的な困難が虐待リスクを高めやすい。
また、地域社会や家族からの支援が不足しやすく、孤立感がストレスを増幅させる可能性も指摘されている。
現状の日本の福祉制度では、障害のある親に対する子育て支援は、十分とはいえない。
虐待の早期発見と対応を目的とした法律の制定や改正や地域の相談窓口や支援ネットワークを拡充し、特に障害を持つ親が孤立しない環境作りを推進すること、障害を持つ親が就労しやすい環境や、経済的支援の制度を整備することが、虐待リスクを減らすことにつながるだろう。
フィンランドでは、障害を持つ親に対する包括的な支援が功を奏しており、虐待率が低下しているという報告もある。
具体的には、訪問支援サービスや家族間のコミュニケーションを助けるプログラムが導入されている。そういった対応が急務だ。
取材・文/田口ゆう サムネイル/Shutterstock