介護のキーパーソンはとび職の息子と統合失調症の娘
地域包括支援センター(以下、包括)からすでに目をつけられていたその一家は、東京都の高級住宅街の一軒家に暮らす、3人家族だった。
80歳の母親には軽度の認知症があり、ベッドに寝たきりの状態。その介護のキーパーソンは40代後半の息子、準キーパーソンは40代の統合失調症を患う妹だった。
澤田さんは、その家庭にヘルパーとして入り、虐待の様子を包括やケアマネジャーに報告しながら、家事支援を行っていた。
「その家庭は、兄と通院しているかどうかも分からない統合失調症の妹で母親を介護していました。私が勤める事業所が関わる前から、虐待が常習化していたようでした。
旦那さんは亡くなっていましたが、スポーツの世界で、名をはせた人のようで、昔はいい暮らしをしていたんだろうと思うような家でした。長男の兄は、甘やかされて育ったようでした」(澤田さん、以下同)
母親は介護保険サービス、妹はなんの障害福祉サービスも利用していない状態だった。
そのため、澤田さんは母のみの介護ができる状態で、妹に関しては様子を見ることだけしかできなかった。