アフリカに到着してすぐに強制送還
――でも当時、スーダンは内戦中ですよね?
アフリカに到着して一番初めに味わった出来事が、強制送還ですよ(笑)。空港に降りて陸上自衛隊からの招聘状とパスポートを出したら、入国審査官がニヤニヤしながら「100ドルよこせ」と言ってくる。でも、こちらにはそんな賄賂まがいのカネは出せない。
困り果てていたら、空港所長がやって来た。所長だったらなんとかしてくれるはずだ、と期待してついていったら、所長室に入るなり、今度は空港所長が「俺に500ドル渡せ。何とかしてやる」と。
それを固辞したら、警備兵を呼ばれ、兵士4人にカラシニコフ銃を突きつけられて強制送還。もうビックリしましたけど。会社に電話をしたら、「抵抗せずに戻ってこい」と。
――そんな理不尽なことがまかり通るんですね。
そのときに乗っていたのはドバイ系の航空会社だったんですけど、仕方なく飛行機へ戻ったら、キャビンアテンダントが笑顔で「ウェルカム・バック」と(笑)。そしてビジネスクラスのとこに座らせてくれて、シャンパンが出てきました。「年に何回かあるのよ」って。
――まるでフィクションのような話です。
まったく信じられない話です。飛行機についてはもう一つ面白い話があって、こっちは『太陽の子』に少し書いたのですが、アフリカ中部の紛争国・コンゴ民主共和国で、ある鉱山王に同行して地方のレアメタル鉱山を取材したことがありました。
コンゴでは国内移動でもパスポートや荷物の検査があるのですが、鉱山王はそれぞれ係員に100ドル札を手渡し、すべてノーチェックで通過していく。
同行した僕たちがそれ以上に驚いたのは、途中で飛行機のルートを変えさせたことです。鉱山王は通常、プライベートジェットで移動しているのですが、その日は運悪くそのプライベートジェットが点検中で、通常の旅客機で移動するしかなかった。往路こそ、所有するレアメタル鉱山がある地方への直行便があったのですが、復路では前後2日間、その地方空港には発着便がなかった。
日本でたとえるなら、鉱山王は東京に住んでいて、所有するレアメタル鉱山が秋田にある。行きは秋田への直行便があったが、翌日の秋田発着の便がない。そこで彼がどうしたかというと、言わば札幌発東京行きの航空機を急遽、秋田空港に一時着陸させ、東京に戻るという強引な手を使ったんです。
鉱山王は「カネさえあれば、コンゴでは何でもできる」と豪語していましたが、アフリカといえど、ちょっととんでもない話です……。
取材・文・撮影/集英社学芸編集部













