ベッドに起き上がり用の手すりを付ける

高齢になると、体のバランスを保つ働きを手で補おうとするようになります。杖や、階段の手すりは、そのために必要な器具です。言い方を換えれば、足腰が弱っても〝つかまるもの〟があれば、日常の生活動作への支障は軽減できるのです。

親が家の中で壁や家具をつたって歩いていたら、その動線に沿って手すりの設置を検討してください。そして、いずれは必要になるのがベッドの手すり。

腹筋や背筋が衰えてくると、上体を起こす動作はどんどん困難になります。そうなる前にベッドに手すりを設置しておけば、動くときは「何かにつかまる」ことを普段から親に意識してもらえるようになると私は考えています。

手すりナシで生活できていると、人間の行動心理で「手すりなんかなくても大丈夫」と、設置を嫌がるかもしれません。そんなときは地域包括支援センターに相談してください。介護保険が適用されれば、手すりは一週間ほど無料で試せますし、専門家の提案ならば、親も「使ってみよう」と思うのではないでしょうか。

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ドアノブを回転式からレバー式に交換

スキンシップのきっかけに親と指相撲をしてみては?と、第3章に書きましたが、実際にやってみれば、親の握力が弱くなったと感じると思います。高齢になれば握力は低下します。私が訪問先でしばしば耳にするのは、「ドアが開けにくい」という親世代の悩み。

回転式のドアノブは、ひねって押す(引く)という動作に高齢者は不自由を感じることがあります。その場合は、ノブをレバー式に交換してあげるといいでしょう。

レバー式への変更は、介護保険で対象となる住宅改修の種類に含まれます。親が元気でも、まずは地域包括支援センターに相談し、要支援(要介護)の認定を受けられるかどうか確認してください。認定が下りれば支援センターの担当者が福祉用具専門相談員に依頼し、図面や見積書などを作成した上で、役所への事前申請も代行してくれます。

ペットボトルオープナーをキッチンに

ひねって開ける動作は、ペットボトルも同じ。キャップの固さは水道の栓以上ですが、この不便さは100円(税別)で解消できます。

ペットボトルオープナーはいろいろな種類が市販されています。電動式のオープナーもありますが、お箸を使うくらいの握力があるうちは、100円ショップなどで扱っている安価なもので十分です。その多くに缶のプルトップを開ける機能もついています。冷蔵庫の近くやリビングのテーブルサイドに置いておくと、とても重宝します。

握力の低下は、循環器系の疾患や認知症のリスクが高まるという研究データもあります。できるだけ現状の握力を維持できるように努めてもらうことも大切です。

「テレビを見るときはにぎにぎしてね」と言い添えて、ハンドグリップなどの運動器具をプレゼントするのも思慮深い恩返しになります。

写真/shutterstock

親への小さな恩返し100リスト
田中克典
親への小さな恩返し100リスト
2024/12/13
1,650円(税込)
192ページ
ISBN: 978-4391164107

離れて暮らす親は気づけばもう70代。帰省のたびに、「親の老い」を実感しませんか? 
その姿を見ると、仕事や家庭の事情などで、ずっと一緒にいてあげることはできないけれど、「いつかなにか親孝行、恩返しをしたい」という気持ちが湧き上がってきます。

ですが、そう思っているうちにも、親は確実に老いていきます。
もしかすると、恩返しができるタイミングを失うかもしれません。
ケアマネジャーとして、介護の現場に長く身を置いてきた私は、そういった子の「後悔」の声を幾度も耳にしてきました。

「もっと好きなごはんを食べさせてあげればよかった」
「もっと一緒に旅行すればよかった」
「もっと話を聞いてあげればよかった」

そんな後悔をしないために、そして親に幸せな晩年を過ごしてもらうために、「恩返し」を始めませんか。

何をすればいいのか、何から始めればいいのか、考え悩む必要はありません。離れて暮らしていてもできる、また、次の帰省時にすぐできる「小さな恩返し」はたくさんあります。

この本ではそんな「小さな恩返し」を12の章に分けて、計100項目をリストアップしました。
できることから一つずつ始めることで、親は「いつまでも元気でがんばろう」という生きる意欲と気力を呼び起こすことでしょう。

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