全員が間違えずに我が子を引き当てる確率は、実に720分の1⁉

煙焔が迫る中、小百合王妃(当時・以下同)をはじめ6人の母親たちは、泣き声が響く新生児室に駆け込むやいなや、息を飲む。区分けしたベッドが倒れ、どの赤ん坊が誰の子なのか、全く見当がつかなくなっていたのだ。

母親たちはとっさに我が子だと思う赤ん坊を抱き上げ、か弱き命を火災現場から救い出したのだが――。

真弓先王の大親友でもあるハラボテ・マッスル宇宙超人委員会委員長は、苦渋の表情でこう語る。

「まだ個別にマスクすら装着されていない出生直後の出来事。大パニックの中、母親たちが自分の子を間違えずに連れ出せたかどうかは、正直分からんのです。あの時〝赤ん坊の取り違え〟が起きてしまった可能性は否定できん」

赤ん坊の取り違えが起きた可能性も…
赤ん坊の取り違えが起きた可能性も…

見分けのつかなくなった6人の新生児の中から、母親が我が子を正しく選択する確率は6分の1。6人の母親が入室順に赤ん坊を選んだとして、全員が間違えずに我が子を引き当てる確率は、実に720分の1である。

仮に、小百合王妃が正統なキン肉星王子=スグルを抱き上げていたとしても、他の5人の新生児がみな、実母に選ばれたとは限らない。新生児の取り違え事件は地球上でも実例があるが、そもそも、王家の子であろうとなかろうと、母子がシャッフルされること自体、とんでもない悲劇なのだ。

「あの現場では“火事場の母力”によって、母子6組が全て正しい組み合わせになっていたと信じるしかないんですワ。いずれにしても、キン肉王家の血統に疑念が生じる事態は許されん。王族を巻き込んだ赤子取り違え疑惑は、当然ながら表沙汰にできず、長らく超人界のトップシークレットとされてきたんじゃ。大火災から24年後、キン肉マンが超人の神々から次期大王の承認を受けるあの日までは……」(同前)

ハラボテ・マッスル委員長
ハラボテ・マッスル委員長