「開かれた王室」を掲げていた故に…
火事場のクソ力――。窮地に陥ると発動し、キン肉マンことスグル現キン肉大王を“奇跡の逆転ファイター”たらしめてきた、超人パワーの限界突破現象だ。
キン肉星全国紙の王室担当キャップが解説する。
「あの力は、地球の慣用句にある“火事場の馬鹿力”とは似て非なるもの。その源泉は友情パワーとも言われていますが、古来キン肉王族に潜在する特殊能力でもあります。歴代でもスグル大王が発揮する“クソ力”は、パワーの振り幅が突出して大きい。それとどう関係するかは分からないのですが、スグル大王が人生で最初に直面した窮地は、生後間もない時でした。文字通り、ホンモノの“火事場”に遭遇しているんです」
スグルが出生時に遭遇した“火事場”と抜きん出た“クソ力”は、時を経て、天の神々とキン肉王家を巻き込む戦乱の引き金となる。いま一度、その経緯と舞台裏を徹底検証したい。
地球から離れること500億光年、大キン肉星雲第5番惑星キン肉星。地球西暦1960年4月1日にあたるその日、王都キン肉タウンのキン肉星第8病院で、6人の男児が元気いっぱいの産声を上げた。そのうちの1人が、キン肉真弓大王と小百合王妃の間に誕生した次男スグルである。
長男の存在については別稿で触れるとして、キン肉星最大の規模を誇るこの第8病院が突如、猛火と黒煙に覆われたのは、スグルたちの誕生から数日後のことだった。
キン肉王家に仕えてきた側近の一人が明かす。
「真弓大王は、王宮の闇と命懸けで闘った父のタツノリ大王の改革路線を踏襲し、小百合王妃とともに『開かれた王室』を掲げてこられました。お二人が庶民からも親しまれやすい王族になろうと努めてこられたのは、民衆の誰もが知るところです。ところが、あの病院大火災では、庶民との“距離の近さ”が、想定外の災難を招いてしまったのです――」
スグルは、キン肉王家のロイヤルベビーでありながら、縁あって同日の同時刻に生まれた運命の赤ん坊たち5人と、分け隔てなく同じ新生児室でベッドを並べていた。