重くのしかかる生活費と借金
弁護側の同意殺人の主張とは異なり、検察側は比較的高額な支出や前原被告に借金があることから、経済的に困窮した末の犯行だと指摘する。
前原被告には、銀行などから500万円の借金があったが、自宅を売却して借家として生活する契約を結び、2000万円の収入を得て、返済に充てたとのこと。だが、3年で底をつき、知人から300万円を借金するなどして生活していたという。
事件当時は、家賃、生活費と支出が多く、母親の年金だけでは生活ができず、毎月20万円ほどの赤字だった。犯行直前の22年6月からは携帯電話の通信料金や水道代を滞納するようになっていたというのだ。
16日の第4回公判で、検察側は「経済的破綻から自殺を決意し、被告が母親と無理心中を図った」、「母親は末期の認知症で、殺害を依頼できる状況になかった」と指摘。殺人の罪が成立するとして懲役8年を求刑した。
一方で弁護側は、「殺害を依頼されたと信じていなければ、大切な母親を殺害するはずがない」として、具体的なエピソードに触れながら「被告の供述は信用できる」として、殺人の罪よりも法定刑の軽い、同意殺人の罪が成立するとして、執行猶予の判決を求めた。
被告人質問の中で印象的な場面がある。弁護側から「勾留中に見た夢」について質問され、
「母と2人で、母の生まれた家に行った夢を見ました。母は、健康で笑顔でいて、安心してよかったなと思いました」
と落ち着いた表情を見せた前原被告。傍聴席には、涙を流す人の姿もあった。
次回、来年1月9日に判決が言い渡される。
取材・文/学生傍聴人