推しについて、孤独に書いてみよう

言葉って、「自分にしか見えない言葉」と「他人に見せる言葉」では、かなり異なります。

他人に見せる言葉は、無意識に「他人にいいと思われるようにした言葉」を使いがちなんですよね。現代の大SNS時代だと、なおさら。

「いいね」の数が見えて、誰にでも言葉が届くようなSNS空間は、無意識に他人の価値観に寄せた言葉を使ってしまう場所です。それはもう、人間の生まれ持った素質です。責められることでもないし、むしろみんなの社会性ゆえでしょう。

でも、そういう場所で人と違う意見を書くことは、ちょっとだけ勇気を要します。自分の感想をメモするために、その勇気を使う必要なんてありません。だから自分にしか見えないところで、自分の感想を言語化するのが一番いいんです。それが一番ラクな方法。

そして他人に見せる言葉は、自分のメモからつくっていきましょう。

まずは孤独にメモをする。自分だけのメモをつくることが、あなたのオリジナルな感想を生みだします。ちなみに、メモは孤独に書くのが、一番自由で楽しいと私は思っています。

ただでさえ、他人と自分の価値観を無意識にすり合わせてしまうSNS時代。もちろんすり合わせてもいいんですが、やりすぎると、他人の感情と距離をとれなくなってしまいます。どこかで誰かに洗脳されても気づかなくなってしまう。その危険を避けるために、まずは自分の言葉をつくる必要がある。

推しについて自分だけの感想を書くことは、「自分の言葉をつくる」気軽なファーストステップです。

自分の感想が降り積もっていった先に、あなたのオリジナルな言葉がつくられます。それって、自由で、面白くて、なかなか楽しい世界じゃないでしょうか。

あなたのオリジナルの感想こそが、自分の揺るぎない推しへの信頼につながる。それこそが、また回り回って私たちの人生の価値観をつくりだす。

そうやって推しを楽しむことも、きっとできるはずです。

推しを孤独に書く(メモする)こと。

意外と、悪くないですよ!

メモを作るイメージ
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すぐに言葉がでない人はメモを残す

言語化がうまくいかないときは、とにかく細分化して具体的に考える。悪かったところを言いたいときには、自分に引きつけて考える。

しゃべる段階での言語化とメモする段階での言語化に、そこまで違いはありません。

自分でメモした言語が自分のなかに溜まっていけば、誰かと話しているときも、自然と言葉がでてくるはずです。日ごろからメモなり日記なりSNSなりに自分の感想を残しておくと、人と話しているときも言葉がでてきやすくなります。

人と話しているときに言葉がうまくでてこない! と悩んでいる人は、ぜひ自分だけの時間をつくってメモを残して、孤独に自分の言葉をつくることを試してみてください。

他人と話していると、どうしても他人の言葉に引っ張られてしまうんですよね。それがむしろ会話の面白さでもある──自分の言葉と他人の言葉が重なって、自分だけだと考えもしない着地点が見つかるところが、会話の魅力でもあります。

ただ、事前に自分自身の言葉がちゃんとあったほうが、他人との会話を楽しむことができるのも本当です。

まずは自分だけの言葉をつくる。

そしてその言葉を、他人との会話で取りだせるようにする。それが「自分だけのしゃべり」につながるはずです。


文/三宅香帆 写真/Shutterstock.

「好き」を言語化する技術 推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない
三宅 香帆
「好き」を言語化する技術 推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない
2024/7/31
1,320円(税込)
256ページ
ISBN: 978-4799330838

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