勝敗を左右するのは「平均打率」ではなく「出塁率」
彼は「野球とは、点を多く取ったほうが勝つゲームである」という、従来の圧倒的な「常識/定説」を「野球はアウトにならない選手が多いほど負けないゲームである」と読み換えました。
つまり、これまでの「チームの『平均打率』が当然、得点や勝敗に大きく影響しているのだ」という常識を覆し、「『出塁率(=ヒットだろうと四球だろうと、とにかく〝アウト〟にならずに塁に出塁する確率)』こそが、より得点に大きく影響し、勝敗を大きく左右する」、という説(※1)に着目し、チームを作り変えようと考えました。
そして、それまで選手の年棒には反映されていなかった四球の数が多いバッターを安い金額で獲得し、年俸の高いスター選手がいなくとも勝てるチームを作り上げたのです(※2)。
(※1:データ好きの野球マニアのビル・ジェイムズが、1978年に『野球抄』という自費出版の小冊子で提唱し、その後、ディック・クレイマー、ピート・パーマー、サンディ・アルダーソン、エリック・ウォーカーらがまとめた考え方。後に、現在のMLBでも重視されているOPS(出塁率+長打率)へとつながる)
(※2:『週刊だえん問答 コロナの迷宮』(若林恵+Quartz Japan編著 黒鳥社)をもとに、筆者がまとめた)
ビリー・ビーンは次のような「インサイト」を発見したとも言えます。
みんな/世の中は、「チームの『平均打率』こそが、勝敗に大きく影響する」と思っているかもしれないが、
実は/本当は、「チームの『出塁率』こそが、勝敗に大きく影響する」と自分は思う。
ここで大変興味深いのは、「出塁率」というデータは、野球が始まってからずっとあったにもかかわらず、誰もその有用な「価値」を見いだせていなかったことです。