お見合い当日、相手は一体どんな人……?
当日、筆者は時間ぴったりに待ち合わせ場所に到着した。目印や行き方など、かなり詳細に説明されているので、とくに迷うことはなかった。しかし、そこに相手の姿がない。
当日の連絡は、クラウド電話を用いて行なう。マイページからアクセスすると、まず自分のスマホに着信があり、数秒間のアナウンスのあとで相手につながる。
お見合い相手によると、場所がわからず遅れているらしい。正直、「あんなにくわしく書いてあるのに?」と思ってしまった。
2、3分遅れて相手が現れた。合流後の動きについては細かく指定されていないが、カフェやレストランに移動するのがセオリーだろう。時間については30分〜60分が推奨されている。
すると相手が、「お店って、アプリが決めてくれてるんですかね?」と聞いてきた。「TOKYO縁結び」にそういったシステムはない。正直、「それくらいわかるだろ」と思ってしまった。
お店は自分たちで選ぶことを教えると、「〇〇(今いる地名)、くわしいですか? 僕はあまりわからなくて」と言われ、さらに萎えてしまった。初対面でダラダラと街を歩くよりは、早めに店に入ったほうがいいだろうと、駅ビル内の飲食店に入ることにした。
会ってすぐに頼りなさを感じたので、最初の印象はあまりよくなかった。しかし、相手から質問をしてくれたり、話題を提供してくれたりしたので、早めに打ち解けることができた。
遅めのランチを食べながら、お互いのことを話していく。まずは、仕事の話から。プロフィールで業種や職種はわかるが、大切なのは仕事に対する考え方だ。話してみると、価値観はかなり近いように感じた。というのも、お見合い相手は来月、勤めている大企業を1年半で退職し、フリーランスのエンジニアとして独立するのだという。
筆者も、会社にあまり長く勤めた経験はなく、フリーランス歴が長い。それは、チームで規模の大きな仕事をするより、自分1人の手が届く範囲で働くほうが性に合っているという理由なのだが、その感覚が同じだったのだ。
また、趣味の話でも共感するポイントが多かった。基本的には外出嫌いでインドアなものの、自分の趣味や好きなことのためには、労力を惜しまず行動できるという絶妙なバランスが似ている気がした。
すごく楽しいというわけではないが、会話が途切れて気まずい沈黙が流れることもない。30分ほど談笑したあと、少し踏み込んだ質問をしてみた。結婚願望がどれくらいあるかということだ。
回答は「ぜんぜん、ありますよ!」。真剣に結婚を考えていなければ、あれだけ面倒な登録作業を乗り越えられないということだった。しかし、いつまでに結婚したいのかと聞いてみると、今度は「僕はいつでもいいかな」という答えが返ってきた。
また、子どもについても「作りたいかどうかは、まだわからない」「家族を持つより、まずは仕事で自己実現したい」とのこと。
ちなみにお見合い相手は、民間のマッチングアプリ「Pairs」を利用したことがあるという。そのときは、メッセージのやり取りが面倒で、自身が組んだシステムとChat GPTを活用し、自動的に返信していたそうだ。
たまにAIが暴走して、ブロックされることもあったとか。会う約束をしてもドタキャンされることが多く、実際に会えたとしても、交際につながったことはほぼないらしい。
一方、「TOKYO縁結び」は、メッセージのやり取りやドタキャンの心配がないのがいいと言っていた。ただ、サービスを利用し始めてから2、3週間で、マッチングしたのは筆者のみだという。
自分から「いいね」や「メッセージ」といった積極的なアクションを起こせないぶん、民間のアプリよりマッチング率は低く感じるとのことだった。
その後、ちょうど60分ほどで話を切り上げ、店を後にして駅で別れた。