日本にとって民主党の継続ならばよかったのか
ただし、こうしてトランプ政権の危険性を主張すればするほど、それではバイデン=ハリスなり民主党なら良かったのかという問いにも答えなければならない。
バイデンやハリス、そして民主党の「ものわかりの良さ」を評価するなら、過酷な要求はなされないとは思われるものの、それはその方が「同盟国の離反」という破局的な結果を招かずにすむと考えているだけのことで、「同盟国」たるものの本質がなくなるわけではない。
日本はこの「同盟国」を続けることによって、すでに日米繊維交渉の時代から何度も何度もひどい目に遭ってきた。今後、予測される事態が厳しいからと言って従来が良かったということには決してならないのである。
実際、このオブライエン氏の論文は「中国の膨張」やアメリカの弱体化のもとでどうすべきかという観点からのもので、それこそがニクソン(やリンカーン)に通じる「路線転換志向」のものの見方であった。
それは、トランプや共和党が「路線維持」をそもそも持続不可能と見ていることを意味する。あるいは、少し言い換えて、「同盟国」に対する過去とは比較にならない規模の負担分担要求をしなければアメリカ自身がもたなくなる、アメリカ国民の負担が限界を超えると考えているということになる。
トランプや共和党が「アメリカ・ファースト」という名の「自国本位主義」の権現のようになっているのはそのためである。
しかし、こうしてアメリカ国民の負担がどうなろうと我々には知ったことではない。アメリカが世界でしてきたこと、我々にしてきたことの是非こそが問われなければならないのであって、それこそが目的である。私は経済学者なのでその検討は主に経済問題にしぼられるが、である。
たとえば、トランプが「アメリカ・ファースト」を叫ぶ一方で、バイデンや民主党が叫ばなかったのは「世界の正義」を守る庇護者としての大国の自覚を持っていたからだとされる。