「令和ロマン」はつかみからネタの流れがよかった

2023年のM−1で、しっかりお客さん全員と会話をしたのは令和ロマンと、あとはさや香やったと思います。

採点基準でいうと、つかみがあるか、それがウケたかどうかは、僕の中では直接的に点数には影響しません。

でも、つかみで最初に笑いをとれると、スタートダッシュがよくなります。そのおかげで、本ネタに入って1つめのボケのウケ量が大きくなります。

もちろんつかみからの流れも重要です。一度笑いをとって場の温度が上がったものを落とさないように、スッとネタに入るのが理想的です。

【M-1】お笑いの賞レースで「つかみ」は必要か? 2023年M-1決勝での令和ロマンが教えてくれた「つかみ」の正解_3
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たとえば真空ジェシカも、毎回つかみを入れますが、そこからスッとネタに入るという感じではありません。川北くんがすぐには意味がわからないボケをして、ガクくんが説明しながら突っ込む。そこから、いったん間を空けて、再スタートでネタに入るという展開が多い。決してスベっているわけではない、ちゃんと面白くてウケるんですけど、これだとネタへの入りはあまりスムーズではないと思います。

令和ロマンは、そのあたりのさじ加減も上手い。つかみでボケて、いったん笑いが起こってからも、ブツクサつぶやくようなボケとツッコミを何ターンか入れつつ、スッとネタに入るあたり、技術が高いなと思います。

ただし、つかみで失敗すると後が難しくなるというリスクもあります。最初にスベって仕切り直してネタに入る。そうなると、マイナスからのスタートになって、それを挽回できないまま終了……というパターンもよくあります。

そうしたリスクもありますが、基本的にはメリットのほうが大きいと思うので、僕はつかみを入れたほうがいい派なんです。

『答え合わせ』(マガジンハウス)
NON STYLE 石田明
『答え合わせ』(マガジンハウス)
2024/10/31
1,100円(税込)
新書 :240ページ
ISBN: 978-4838775279
“M-1 2008優勝”“生粋の漫才オタク”がはじめて語る「漫才論」「M-1論」「芸人論」
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