太った人が食べていた野菜や果物は…

2つ目の研究は、同じ研究チームで、米国人約13万人を追跡し、摂取する野菜と果物の種類によって体重が変わってくるかを評価したものである。先ほどの研究では食事全体を評価していたのに対して、こちらはその中でも野菜と果物に絞ってより詳しく解析を行ったものである。その結果は、野菜や果物の種類によって体重への影響は異なるというものであった。

食事内容の変化と体重の変化の関係(野菜と果物に絞ったもの)
食事内容の変化と体重の変化の関係(野菜と果物に絞ったもの)

じゃがいも、とうもろこし、えんどう豆のようにデンプン質の多い野菜の摂取量が増えている人は、太る傾向にあることが分かった。

野菜の中でも、特に食物繊維が多く、グリセミック負荷(グリセミック指数=GI値に対象の食品に含まれる炭水化物の割合を掛け合わせた指標で、最近ではGI値よりも適切な指標であると考えられている)が低いものは痩せる傾向にあることが明らかになった。

具体的に痩せていた人が多く食べていた果物は、ブルーベリー、プルーン、りんご、梨、いちごなどであった。野菜に関しては、大豆、カリフラワー、ズッキーニ、サヤインゲン、ピーマン、ブロッコリーなどを食べていた人は痩せる傾向にあった。

これらはあくまで研究であり、ある食生活をしている人を追跡して、その人の体重がどのように変わったかを評価したものである。

総摂取カロリーだけでなく、運動量、1日のうち座っている時間やテレビを観ている時間、喫煙習慣、睡眠時間などのほかの生活習慣に関しては統計的な手法を用いて影響を取り除いている。

つまり、同じような生活習慣の人で、食習慣が違う人を比べているのである。これらに加えて2つ目の野菜と果物の研究では、食事に関する他の要因(野菜と果物以外の食事内容)の影響も統計的に取り除いている(2つ目の研究では果物や野菜の種類でカロリーそのものが変わってしまうため、総摂取カロリーの影響はあえて取り除いていない)。

これだけ洗練された統計手法が使われていても残念ながら完璧ではない。健康的な食生活をしている人と不健康な食生活をしている人とでは、運動や喫煙習慣など研究者がデータとして集めたもの以外の要素(そもそもの健康に対する意識など)も違うと考えられ、統計的手法ではこれらの影響を100%取り除くことはできないからである。

つまり、これらの研究からは自信を持って因果関係があると言うことはできない。それでもなお、太った人、痩せた人がどのような食事をしていたのかを観察することで参考にできることはたくさんあるだろう。食事の影響に関しては、個人差がある可能性もあるので、実際にご自分で食事内容を変えてみて、それで体重がどのように変化するかを見てみるのも良いだろう。

図/書籍 津川友介著『正しい医学知識がよくわかる あなたを病気から守る10のルール』より
写真/shutterstock

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参考論文

*1 Mozaffarian D et al. Changes in Diet and Lifestyle and Long-Term Weight Gain in Women and Men. N Engl J Med. 2011;364 (25):2392-2404.
*2 Bertoia ML et al. Changes in Intake of Fruits and Vegetables and Weight Change in United States Men and Women Followed for Up to 24 Years: Analysis from Three Prospective Cohort Studies. PLoS Med. 2015;12(9):e1001878.