ブランドでもない米が既に5キロ3000円台の半ばに…

新米が出回る9月を前にした8月は、もともと米の供給の端境期だが、今年はさらに「コロナ禍明け」「災害」という要因も加わった。江戸時代から続く都内の老舗で、農協や農家との年間契約で今も在庫を維持している米穀店関係者も今年の異常さを話す。

「コロナ禍明けで飲食店が稼働するようになったのもあって、消費がすごく増加した状態になってて、それでお米が全く店頭に並ばないんです。

あとは最近、地震とか台風が相次いで、特に地震は南海トラフが来るんじゃないかなんて言われていますから、皆さん備蓄米として貯められるんですよ。天候とかインバウンド需要とか、そういったところに災害が重なって一気にダダっと売れちゃった感じです」

実は政府は91万トンの政府備蓄米を確保しているが、農水省は「需給がひっ迫している状況ではないという認識をしています。

秋までつなげられる量は、全体としてはあるということで、今のような需給環境下で放出をすると、どうしても市場への影響が出てしまうので今は放出は考えませんが、秋の収穫量が極端に悪くなったりして供給量が需要量を下回るとの見通しになれば当然検討します」との立場だ。

同省関係者は「例えば、大手コンビニのお弁当やおにぎり、飲食チェーンの米が品薄になった実感はありませんよね。これは、コンビニなどが卸や産地ときっちり結びついて、年間需要量を見越して2、3年前からの契約で確保しているためです」と話し、あらゆる米が足りなくなっている状況は起きていないと話す。

スカスカの棚(読者提供)
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食卓に届く米も、早場米(通常より早い時期に出荷されるお米)で有名な宮崎、鹿児島産米は8月上旬から市場に出始め、首都圏では盆すぎから千葉産の米の流通も始まっている。農水省は早場米の出来映えは順調だとみており、9月に新米が本格的に出回り始めれば品薄感はかなり解消すると展望している。

ただ、先の老舗米穀店関係者は「これから新米がザッと入っては来るんですが、今までの価格よりは間違いなく高くなると思います」と心配する。

別の都内の米穀店店主も「品薄はあと2、3週間で解消するでしょう。でもこれだけ上がった値段はもう下がらないかもしれない。ブランド米でもない早場米が既に5キロ3000円台の半ばとか、めちゃくちゃな値が付いて回り始めている」と話す。

米価はそもそも生産者が生きていけないほど安くなっているとの指摘もあり、生産者側からは適度な上昇を望む声もある。大きな値上がりは生活をいっそう苦しめることになるが、今回の米騒動は米産業をどうすれば安定的に維持できるのかを考えるきっかけにもなりそうだ。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班