ビジネスモデルが似ているドトールと回復スピードで差が生じた理由は?

サンマルクは2024年3月期の売上高が前期比11.6%増の645億円だった。営業利益は11倍の26億円に急増。2期連続の2桁増収も相まってコロナ禍からの復活を印象づけた。

なお、2021年3月期は4割近い減収となって売上高は400億円台に沈み、40億円以上の営業損失を計上していた。

※決算短信より筆者作成
決算短信より筆者作成
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サンマルクカフェは繁華街を中心に出店し、低価格の商品を販売。高回転させて稼ぐビジネスモデルだった。これはドトールに近いものだ。ただし、ドトールはフランチャイズが主体のため、ドトール・日レスの回復スピードは速かった。

サンマルクのように直営店主体の場合、不採算店を閉鎖しなければならない。退店には原状回復費用など多額の経費が必要なうえ、賃貸借契約の関係で即時退去ができないケースがほとんどだ。

「サンマルクカフェ」 (撮影/集英社オンライン編集部)
「サンマルクカフェ」 (撮影/集英社オンライン編集部)

 しかし、サンマルクの店舗数は2024年3月末時点で294。2020年3月末の405店舗から実に111店舗も減少している。コロナ禍で大量閉店を実現した。その甲斐あって、2024年3月期の喫茶事業の営業利益は前期の6倍となる16億円に跳ね上がった。営業利益率は6.1%。2020年3月期は7.6%だった。コロナ前の水準まであと一歩のところにまで迫っている。

店舗数がほぼ同じ「鎌倉パスタ」と「五右衛門」

サンマルクカフェの立て直しは、不採算店の閉店だけによるものではない。客単価の引き上効果も大きかった。サンマルクが運営する、1店舗当たりの売上高は2024年3月期が8700万円。2020年3月期は7600万円だったので1割以上高くなっている。

サンマルクカフェの2019年3月期の顧客単価を100とした場合、2024年3月期は136とおよそ1.4倍に上がっている。一方、客数を同じく100とした場合は81まで下がった。客数の回復を待たず、単価を引き上げることで店舗の収益改善を行ったのだ。

コーヒーの単価を単純に値上げしたことはもちろん、主力商品のチョコクロに「桔梗信玄餅」など別のテイストを加えてプレミアム化して単価アップを図っているのだ。しかし、客数が戻らない以上、出店攻勢に出て増収を図るのは悪手。コロナ禍の悪夢を繰り返すことにもなりかねない。

サンマルクカフェの看板商品「チョコクロ」
サンマルクカフェの看板商品「チョコクロ」

サンマルクは新中期経営計画の基本方針として、「サンマルクカフェ業態を中心とした運営効率の改善」を掲げた。セルフレジの導入などによって経費削減を進めるというものだ。
コーヒー豆の価格が高騰していることを鑑みても、カフェ業態を継続的に出店するのは難易度が高いだろう。

そこで、パスタ業態に白羽の矢を立て、鎌倉パスタを出店。派生業態との相乗効果でパスタ業態のポテンシャル最大化を狙うというのだ。

サンマルクは2029年3月期に売上高800億円という目標を立てている。現在の1.2倍に相当するものだ。パスタ業態はその中核を担う存在になるだろう。

鎌倉パスタは2024年3月末時点で200店舗ある。ドトール・日レスの洋麺屋五右衛門は2024年5月末時点で213。2つのブランドはほぼ同じ水準で並んでいるのである。