円安でパンや麺の価格が上がったが米はこれまで…
これに加え、予想外の米の需要増加も起きた。米の需要量は下降線をたどっており、2005年に865万トンだったのが昨年は691万トンに。近年は年ごとに約10万トンずつ減り続けているため、これに合わせた生産量の抑制が行なわれてきた。ところが今年の需要量は702万トンと、予想に反して増えたのだ。
「昨年来、円安などでパンや麺の価格が上がったのに比べると、米の上昇幅は最近まで小さく、“お値頃感”があったため米を食べる機会が増えたのではないかとみています」と農水省。
総務省の消費者物価指数では、2020年の平均を100としたとき、今年6月にパンは121.3に増えた。食料全体では116.3だったのに対し、米は106.7で値上がりが抑えられている。
需要が増えたのは、増加したインバウンド客が米を食べているからだという見方もあるが、これはどうか。
「訪日外国人は今年6月末までの1年間に、前年の同じ期間の2.3倍である3213万人を記録し、平均泊数も8.8泊から10.1泊に増えました。そこで、ちょっと期待を込めて彼らが1日2回お米を食べたと仮定すると、試算では消費量は前年の1.9万トンが5.1万トンになり、3.2万トン増えたことになります。ただ全体が702万トンあるので、これが全体に影響するほどかどうかは何とも言えないですね」(農水省)
いずれにせよ、米の出来が良くなかったことと、近年にない消費量の増加が重なったことで米の「余裕」がなくなった。今年6月末時点の米の民間在庫量は156万トンと、1999年以降では最少に。
これを受け市場での価格が上がり、相場の目安になる農協と卸売業者間の取引価格である「相対取引価格」の全銘柄平均価格は6月の時点で15865円と、昨年同月より約14%高くなった。
「しかし、庶民により関係するのは、業者間で条件が合うたびに売買が行なわれていく“スポット取引”です。これは『余ったので買ってくれない?』とか『ちょっと足りないので回してくれない?』といったやり取りで回っていくもので、その時々の需給と価格がもろに反映されます。
米がだぶついているときは、生産者に近い側が売り先を求め安売り競争が起きたりして、これを仕入れたスーパーは特売価格で売り出せますが、今のような需給量が接近しているときは商品の取り合いになって品薄と価格高騰が起きます。今の値上がり幅は相対取引価格の上昇幅よりはるかに大きいです」(業界関係者)