「雄斗は早い段階で競技者であり表現者だった」 

堀米選手は小学5年生のときに韓国のバーチカルの世界大会に出場し、ジュニア部門で5位の成績を残しているが、このときも両親は付き添わなかったようだ。また立本さんによれば、その集中力の高さは小中学生の頃から備わっていたとも言う。

「たしか小6か中1のときのことですけど、僕のブランドのパート撮影をしてたときに『この角度でこう撮ってほしい』っていうシーンが何度やってもうまくできないときがあったんですよ。

そんなときに雄斗は『ちょっと休憩』なんて絶対言わない。こっちが『気分転換して撮り直そうか』って言ったところで聞かない。結局5、6時間ぶっ通しで撮影して成功しました。とにかく自分を究極まで追い込んでやり切るところがありましたね」

師弟関係は今も続く
師弟関係は今も続く

それでいて“オンオフ”の切り替えやスケボーに大事なオリジナリティを見出すのも早かった。

「撮影時の移動はだいたい車なんですけど、一瞬にしてコテっと寝て、目的地に着いたら誰よりも早く車を降りて滑りだすみたいな。365日、24時間、少しでも長く滑ってましたね。よくスケボーのビデオも見てたし、見せ方も考えてたし。

やはりスケボーって大会やコンテストの結果だけでなく、街中で撮影した独自の映像作品を評価されてこそ超一流という一面がありますから。雄斗は早い段階から競技者でありながら表現者であり、その中でオリジナリティを構築していました」

パリ五輪で金メダルを手にした堀米選手とは連絡を取り合ったかと聞くと「DMはしたけどまだ返ってきてない」と立本さん。どんな内容のメール送ったのかも聞いた。

「尋常じゃない集中力で挑んだことへのリスペクトはもちろん、アプローチが決まった瞬間の表情は昔も今も変わってないってこと、そして東京五輪のメダルも首にかけてもらったから…今回も『首洗って待ってます!』って言葉を添えました」

東京五輪のメダルを堀米選手からかけてもらう立本さん
東京五輪のメダルを堀米選手からかけてもらう立本さん
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最後にスケボーキッズを持つ親たちの子どもへの“ガン詰め”についても、どう思うか聞いた。

「うちのパークに来て下さる親御さんで子どもが蹴られてぶっ飛んでるのを見たことあります。さすがに『それはおやめください』ってお声をかけます。まあ、パークまで車乗せて連れてきたのにうまく滑れない我が子を見てイラつく気持ちはわかりますが、誰のなんのためのスケボーなのかってことを考えてほしいんですね。

その子がスケボーが好きで、滑るのが楽しくて、自分だけのスタイルを作り上げていく中でその子自身のタイミングで覚醒していくんですから」

取材・文/河合桃子
集英社オンライン編集部ニュース班