「堀米くんはスケボーのイメージを変えてくれた」

決勝戦では堀米選手を含む8人の選手が45秒の間に決めるベストトリックの得点で競い合う。8人が滑るごとに得点や順位が変わり、より大きな技を成功させた選手が勝ち抜いていく。

堀米選手が大逆転したのは最終トライ。空中で見えない方向に270度回り、板の後ろ側を幅10センチほどのレールに正確に引っ掛けて滑り降りるトリックで、これを着地まで完璧に決めたことで奇跡の金メダルを手にした。

明けて30日、都内のスケボーの聖地、駒沢公園のストリートスポーツ広場には気温が34度にも上る中、スケーターたちが集まっていた。

その中には少年少女スケーターの親御さんの姿もちらほら。近所に住み、突然スケボーにハマりだした息子のコウシロウくん(9)に付き添う母親のコジマさん(42)は言う。

我が子の練習を見守るコジマさん
我が子の練習を見守るコジマさん
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「堀米くんのような爽やかな青年が世界の大舞台で金メダルを取るとスケボーのイメージも変わりますよね。私たちの子ども時代はスケボーってそんな主流じゃなかったし、どちらかと言ったら不良っぽい人の遊びって印象でしたから。

でも、よくよく見たら体幹が鍛えられる立派なスポーツですよね。息子は3ヶ月ほど前からハマり出したんですけど…どうせならキチッと指導を受けたほうがいいのでスクールに通わせようか検討中です」

息子のノボくん(7)を自転車に乗せて来たという、自身も高校生のときからスケーターだという母のリヨコさん(42)にも聞いた。

リヨコさんとノボくん
リヨコさんとノボくん

 「高校のときからイケてる遊びとしてたしなんできたスケボーが競技になったこと自体が驚きでしたが、堀米くんは小学生の頃からストリートで自分のスタイルを貫いてきてアスリートとしてもトップに立ち、次々と現れる若手選手により五輪出場も危ぶまれた中で超大技を完璧に決めたメンタルがすごいし、超リスペクトです。

うちは夫もスケボーやってるから子連れで遊んでるうちに息子もハマり出したけど、あくまで遊び。レッスンとかは受けさせる気はないです。本人がやりたいって言うなら考えますけど」

リヨコさんは「競技化したことで子どもをガン詰めしてる親を見かけることに違和感を覚える」と言う。

「駒沢はまったりしたスケーターが多いけど、他のパークにたまたま遊びに行ったら『何でできないの?』って子どもを怒鳴ってる親が何人もいて。レッスン受けさせてお金もかかってるだろうから期待してるんだろうけど、子どもの自主性が大事なのにって思います」

これに関してはスケボー歴3年の息子を持つアイコさん(39)も同意する。

「我が子こそ未来のプロスケーターだと意気込み、周囲の目も気にせず子どもを怒鳴り、時には手や足が出る親も珍しくないですよ。

自分はプッシュ(スケボーに足を乗せて地面を蹴る動き)すらできないのに。その点、堀米くんのお父さんはスケーターで、堀米くんに滑り方を教えることはあっても怒ることはなかったみたいだし、何より堀米くんは小学生の早い段階から親離れしたみたいですから…自主性を育んだ成功例ですよね」