現状維持がいい。昇進のチャンスはきっと断る

最後に話を聞いたのはユリカさん(仮名・女性・27歳)。建設業界の大手企業で、工費の管理や資材の発注などを担当する工務として働いているという。新卒から入社し、今年で5年目だという彼女だが、現在の会社や業界にもともとあまり興味がなかったそう。

「就職活動もそんなに力を入れてしていなかったので、とりあえず内定をもらったから入社したというのが正直なところ。現在の仕事は内勤メインですが、現場にも行きますし、夜勤もたまにあります。人手不足なのでメインの仕事以外も任される場面が多々あります」

建設業界の工務と現場監督として働くユリカさん(仮名、27歳)
建設業界の工務と現場監督として働くユリカさん(仮名、27歳)

興味のない仕事、かつ夜勤などのきつい仕事も任せられているようだが、会社に対して不満はないのだろうか。

「特にないですね。入社する前から夜勤があることはわかっていましたし、仕事内容に関してはある程度覚悟していました。一時期夜勤のせいで疲れが取れなくて、なんだかプライベートの時間も楽しめず、つらかった時期もありましたが、夜勤は日勤よりお給料が高いので頑張れました。私が働く一番の目的ってお金のためなんです。今は5年目で順調に昇給もしていて、仕事内容に見合ったお給料をもらえているので不満はないです」

プライベートで野球観戦するユリカさん、推しのちいかわ人形をどこへでも連れて行くという
プライベートで野球観戦するユリカさん、推しのちいかわ人形をどこへでも連れて行くという

1人目のミユさんと同じくユリカさんも「お金・収入」が働くうえでのいちばんの目的だという。ユリカさんは現在の職場に不満はないということだが、もっと給料が高いところに転職しようという気持ちはないのだろうか。

「このまま居続ければ昇給もするし、なにより転職は労力がかかるのでコスパ悪いなって。今の会社は人間関係にも恵まれていて働きやすいですし、いざ転職して人間関係が悪い環境だったら…と思うと、やっぱり転職するメリットよりリスクの方が大きいと感じます」

ユリカさんは現在の会社で「このままなんとなく働き続けたい、現状維持したい」と語る。しかし会社に居続ければ責任が重くなったり、役職が付いたりすることもあるだろう。

「給料が上がるとしても昇進はしたくないです。責任が重くなるのも、自分の時間が無くなるのも嫌。もし役職に就くとなったらきっと断りますね。自分の上司が仕事に追われて大変そうな様子を見ていると、現状のままがいいなって思っちゃうんです。だから昇格試験の勉強もなかなかはかどらないし、今以上に仕事を頑張ろうというモチベーションにつながらないですね」

ちなみに、彼女は仕事のせいでプライベートを邪魔されることは絶対に嫌なんだとか。

「社用携帯があるのですが、勤務時間外はあまり確認しないので、土日の休日などに連絡があっても、週明けまで気づかないこともあります。会社の飲み会も極力行きたくありませんし、もしプライベートの予定が先に入っていたら断ります。

飲み会の場での上司の武勇伝とかその世代の価値観の話って、何も響かないんですよ…。だって私たちの世代の価値観とは全然違うし、正直聞いていても参考にならないんです」

競馬も趣味だというユリカさん、推しの馬マスコットとともに
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“省エネ”な働き方をするユリカさん。彼女のように現状に満足しているからこそ、出世などを敬遠する上昇志向を持たない若者も多いのかもしれない。

――Z世代3人の働き方への本音を深掘りしてきたが、やはり彼らは多かれ少なかれ「自分のために働く」という価値観を重視していた。「そんなZ世代の社員に長く勤続してもらいたいのであれば、企業側も考え方をアップデートしていく必要があるのではないだろうか。

取材・文/瑠璃光丸凪/A4studio