男性育児時代、社会や企業が目指す姿とは

平野さんは育児支援全般における現状の課題として、

「育児支援の対象が女性ばかり」
「共働き世帯の育児を意識していない」

の2点を挙げる。

「世の中の多くの育児支援が母子を対象としたものばかりで、法制度が大きく進んでも企業や人々の文化は『女性が育児』のまま。男性がサービスを使いやすい環境を整備することと、保育などでも標準軸を共働き夫婦のスタイルに合わせていくことが今後大切になってきます。

父親が育児しやすい環境は男女ともに育児しやすい環境とイコールです。産前産後だけは身体的な問題で差が生じますが、それ以降の育児に男も女もない。男女ともに『これだったら使いやすいよね』という支援制度が作れれば社会は大きく変わっていくと思います」

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また父親の場合、復職後にメンタルヘルス不調に陥るケースが多いことから、企業側の支援制度の充実が今後期待されている。

「今後は育休推進だけではなく、フルタイムで働きながら育児できるような育児支援体制を整えることが課題です。例えば在宅勤務など柔軟な働き方を提示したり、企業保育や子どもが病気になった際に手配しやすいようにするなど、育児関連施設とのネットワークを持っておくことが大事です。そうすれば『育休を取得したけど早めに復職して働こう』という社員もでてくると思います」

今後育児に携わる20代は、現在の30~40代の世代と異なり、両親が共働きで、自分たちも働き方が大きく変わる世代。この世代間変化の流れを捉えることが、企業の人材獲得の観点からしても重要となってくるだろう。

「最も理想的な企業の在り方としては、夫婦両方が育休を取得し、両方早く復職し、その後も働きやすい環境を整えること。労働人口が減り、支えなくてはならない高齢人口が増えていく中で、企業は色んな事情を抱えた労働者を抱えなくてはならない。

育児という大きな変わり目を自分の企業に属しながら、個人として乗り越えられるかどうかが今問われていることであり、それをできるような社会体制を作っていくことが社会も企業もやるべきことなのではないでしょうか」

取材・文/集英社オンライン編集部 写真/shutterstock