報告書で明らかになったずさんな管理体制

じつは同社は2月27日に医師兼弁護士のB氏に、3 月13日には弁護士のC氏に行政報告の必要性などに関して相談もしている。両氏は調査の継続はすべきと指摘しながらも、「現時点では行政報告を行う条件は整っていないのではないか」(B氏)、「(会社の報告基準に照らせば)報告対象にあたらない」(C氏)と意見を述べ、会社の姿勢が変わることはなかった。

「結局、小林製薬が公表やむなしと考えたのは、3月15日に行った成分検査で問題のロットのサプリに『意図しない成分』が含まれているとの分析結果が出たからです。

この物質が健康被害と因果関係があるのかは依然分かっていませんでしたが“関連する可能性を否定できない”との判断から、3月22日に公表することが3月18日午前に決まりました。

ところが翌3月19日の会議で、準備に時間がかかるとの理由で公表時期は3月26日午後に延期されることが決まったんです。

結局、3月22日午前に小林会長も出席したミーティングで、同日午後5時に発表することに落ち着いたと報告書に書かれていますが、このあたりのバタバタの経緯には釈然としない部分もあります」(社会部デスク)

体調不良が出た摂取者が購入し、問題発覚時に残っていた紅麹コレステヘルプ
体調不良が出た摂取者が購入し、問題発覚時に残っていた紅麹コレステヘルプ

ここまでが発表が遅れた内幕だが、報告書の後段にはさらに恐ろしい内容が書かれている。

「サプリの製造体制に関する記述です。大阪と和歌山の工場が恒常的に人手不足の状態にあり、問題のサプリの原料である紅麹の製造ラインでは『品質管理を含めた業務については、現場の担当者にほぼ一任されていた。

そして、通常業務においては、何か異常が生じない限り、当該担当者から工場長も含めた上司に対して特段の情報共有はなされていなかった』と報告書は指摘しています」(在阪記者)

さらに、報告書では今回の原因になったかどうかはわからないとしながら、大阪工場の従業員への聞き取りで、

①2022年11月上旬の問題の原料ロットの製造時、乾燥機が壊れ原料ロットの紅麹菌が一定時間乾燥されないまま放置されていた
②紅麹を培養するタンクの蓋の内側に青カビが付着していたことがあり、品質管理担当者に伝えると『青カビはある程度は混じることがある』と言われた
③乾燥工程の設備の一部である排気ダクトの深奥部が目詰まりしているのが見つかり、適切に排気ができていなかった可能性がある

との証言を得たというのだ。

管理不足について記述された報告書
管理不足について記述された報告書
すべての画像を見る

しかも小林製薬は3月22日の公表までに、製造担当者に製造過程の問題を尋ね実態を把握するということをしてこなかった、とも指摘している。

紅麹コレステヘルプの摂取が原因で死亡した可能性があるとして調査中の人は100人に上り、過去最悪レベルの食品健康被害事件になる恐れが出ている。

このサプリを飲み続けた末、腎臓機能が低下し今も検査を受け続けているという女性は「会長と社長の退任のニュースを聞いて複雑な心境です。解任なのか、辞任なのか。どちらにせよ、最後まで責任を全うすべきです」と話した。

小林製薬は23日、報告書や役員人事について「記者会見を開く予定はない」と説明している。これだけの健康被害を生みながら、それで済まされるのだろうか。

※「集英社オンライン」では、今回の「紅麹」をめぐる健康被害について情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(Twitter)まで情報をお寄せ下さい。
メールアドレス:
shueisha.online.news@gmail.com

X(Twitter)
@shuon_news

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班