反応があっての犯罪

同じ銃の所持なのに、なぜある国では重い犯罪とされ、別の国では権利とされるのだろうか。また、同じ不倫なのに、なぜある時代においては犯罪とされ、別の時代では刑事法上問題でなくなるのだろう? 銃の所持そのものが国により違うのだろうか。あるいは、不倫行為自体が時代により変わったのだろうか。答えは「ノー」である。

日本では80年前まで「不倫」は犯罪だった!? 大正時代には10000人以上が起訴された姦通罪とは?_3
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犯罪と言うと、まずある種の行為を考えがちであるが、実は、犯罪というものは、少なくとも二つの要素から成り立っている。

一つは人間の行ったある種の行為であり、もう一つはその行為に対する社会や国家のある種の反応である。行為があっても、それを犯罪とする社会や国家の反応がなければ、犯罪としては成立しない。

犯罪は、あくまでも行為と反応の統一体なのである。この反応が、空間(国や社会)と時間(時代や時期)により大きく変わるのである。

銃の所持が、ある国では犯罪とされるのに、他の国において権利とされるのは、行為そのものが国により違うのではなく、それを犯罪とするかどうかという反応が国により異なるからである。

同様に、不倫が重い犯罪とされる時代もあれば、刑事法上全く問題にならない時代もあるのは、不倫行為自体が時代の変化により変わったのではなく、不倫に対する社会や国家の捉え方が変わったからである。

*1 団藤重光『刑法綱要各論』第3版、創文社、1990年、331頁。

*2 川西政明『文士と姦通』集英社新害、2003年、19頁

*3 林弘正「法学新報」「姦通罪についての法制史的一考察(2)」第106巻第9・10号中央大学法学会、2000年、185頁。

*4 上村貞美『性的自由と法』成文堂、2004年、130頁。

*5 趙乗志主編『刑法修改研究総述』中国人民公安大学出版社、1990年、387頁。

文/王雲海
写真/shutterstock

日本の刑罰は重いか軽いか
王雲海
日本の刑罰は重いか軽いか
2008/4/22
715円(税込)
199ページ
事件や裁判に対する国民の関心が、高まっている。裁判員制度の導入など、さまざまな司法改革も進められている。また、死刑制度に関する議論も盛んである。そもそも、日本で犯罪とされる行為や、与えられる罰には、どのような傾向があるのだろう? 日本の刑罰は重いのだろうか。それとも、軽いのだろうか。日本の刑罰制度の特徴や、その背景について、米国や中国の事情と比較しながら、具体例を挙げつつ分かりやすく解説していく。【目次】はじめに/第1節 犯罪とは何か/第2節 刑罰とは何か/第3節 比較の視点がなぜ必要なのか/第4節 日本の刑罰は重いのか/第5節 日本の刑罰は軽いのか/第6節 日本の犯罪と刑罰の特徴はどこにあるのか/第7節 犯罪と刑罰の国による違いはどこから来たのか/おわりに 日本の刑罰をどう見るべきか
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