欧州では死刑がほぼ全廃、先進国で残るは日米のみ
日本で死刑が法令で規定されるようになったのは、今から1300年近くも前の律令時代のことです。律令体制下では斬首刑と絞首刑が規定されていました。
江戸時代にはさまざまな方法での死刑が行われており、放火犯は火刑に処していましたが、さすがにこれは明治に入ってすぐに廃止され、斬首刑と絞首刑で行われるようになっています。
その後、旧刑法を作る際にお雇い外国人から「残酷だ」との声が上がったため、斬首刑も廃止。明治中頃以降は旧日本軍が銃殺刑を採用していたことを除き、現在に至るまで絞首刑のみで死刑が執行されています。
しかし、自国の死刑制度について、私たちはほとんど何も分かりません。日本では絞首刑の執行に関する具体的な事項は、全く明らかにされていません。法律にも規則や命令にもほとんど規定されておらず、情報も開示されないので、詳細を調べようにも調べられない状況なのです。
アムネスティ・インターナショナルの調査によれば、2022年末時点で、法律上も事実上も死刑を廃止していない国、つまり法律で死刑というものが決まっており、死刑判決を言い渡して死刑の執行まで行っている国・地域が55あります(図1)。
ここには日本やアメリカ、中国も入りますが、イスラム教の国が多いのが特徴的です。
一方、死刑を完全に廃止している国は112あります。さらに、軍事犯罪や内乱などを除いて、通常犯罪の死刑は廃止しているという国が9、法律上は死刑が残っているけれども実際には使っていない、すなわち事実上廃止しているという国・地域が23あります。
つまり、数だけを見ると「死刑を完全に廃止しているか、事実上廃止している」という国の方が多いのです。しかも、先進諸国を見れば、いまだに死刑を行っているのは日本とアメリカだけ。
ヨーロッパではほとんどの国が死刑を廃止していますが、国連加盟国で1カ国だけ廃止していないのが独裁国家として知られるベラルーシです。ベラルーシは、人権上も大きな問題がある国といわれています。
ヨーロッパでは死刑がないことが当たり前の時代に育った世代が増えていますから、日本がいまだに絞首刑を採用していると言うとかなりびっくりされますし、日本人の人権感覚自体を疑われることもあります。このことは多くの方に知っておいてほしいと思います。