投稿雑誌に写真を横流しするカメラマンも
「アスリート 盗撮」といったワードでインターネットで検索すると、女子陸上選手がスタート時に前屈みになっている姿や、女子バレーボール選手のレシーブの瞬間の股間を狙った写真など見るに堪えない写真が無数にヒットする。そればかりか赤外線カメラで撮影された下着やバストトップなどが透けて見えてしまっている写真まで出てくる有様だ。
なぜ女性アスリートが狙われるのか。『ルポ性暴力』の著者でノンフィクションライターの諸岡宏樹氏は言う。
「競技によってその形状は様々ですが、密着したユニフォームから浮かび上がる肢体や記録更新に向けてひたむきに競技に取り組む女性の姿を自慰行為目的などで撮る男性は非常に多い。盗撮は一方的な支配感情によって成立しているため、許可なく撮影することの暴力性には気づいてない人が多いのです」
実際にアスリートの盗撮に手を染めていただけでなく、未成年の撮影会に参加し、児童ポルノ禁止法で罰金30万円の刑罰を受け、今は自助グループの更生プログラムを受けている50代会社員男性、A氏は言う。
「もともと高校生の頃から女性のパンチラ画像を盗撮しては、当時流行ってた投稿雑誌に送る趣味がありました。80〜90年代はこういった写真投稿雑誌ブームで、公然と盗撮写真誌が書店に何冊も並んでいたのです。投稿誌に載ることが私にとってのステータスだったので、ラジオ番組の投稿職人と同じような感覚で、罪の意識はありませんでした。もちろん今は反省しています」
また、当時はプロのカメラマンの中にも偽名でこの手の投稿雑誌編集部に自らの写真を売ったり、投稿するケースもあったという。
「競技大会などで報道写真を撮るために取材で入るプロのカメラマンの中にも、本来の仕事の写真とは別にパンチラや股間狙いの写真を撮ってるカメラマンさんはいました。いい瞬間が抑えられれば本来の仕事以上に高値で買い取ってもらえる場合もあったので、嬉々として撮ってるかたもいたほどです」(A氏)
それまであらゆるジャンルの盗撮を好んだA氏がアスリート盗撮に特化するようになったのにはキッカケがあった。
「まさにシドニーオリンピックで高橋尚子さんがゴール瞬間にバンザイをしてヘソを見せた瞬間です。それまでのマラソンランナーはシャツをインするのが主流だったので、その斬新なユニフォームにグッときました。それ以降は陸上競技をメインに高校や大学、何かしらの陸上競技の大会があるたびに盗撮に行くようになりました。特にセパレートのユニフォームが主流になってからは、我々へのサービスかと思ったほどでした」