刑罰が持つ二つの秩序維持機能

為政者は、なぜ大きな刀を持った役人を井戸の傍らに立たせて、水汲み順序やルールを破った者を斬らせたのであろうか。

言い換えれば、国家はなぜ命までを奪うことのできる最も重い刑罰を、過去から今日まで使い続けているのであろうか。その最大の理由は、恐らく刑罰の持つ二重の意味での秩序維持の機能にあるように思われる*1。

まず、人間の集まりである社会には、どうしても犯罪や紛争や衝突が起こる。それらの解決を全て私人に任せると、私刑や復讐が頻繁となり、公としての社会や国家は成り立たない。

それを防ぐために国家は刑罰を設け、私人による復讐の繰り返しを禁止して、自らの手で秩序を回復しようとする。つまり、刑罰は秩序を回復するという機能を果たす。

次に、国家が私刑や復讐を禁じても、罪を犯した者または紛争や衝突を引き起こした者を懲罰せずに放置していれば、同じく公としての社会や国家は機能しない。

そのために国家は刑罰を設け、被害者の代わりに加害者を懲罰することを通じて秩序の破壊を許さない姿勢を示そうとする。つまり刑罰は、秩序を破壊した者を懲らしめることによって、秩序を維持する機能を果たす。

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では、国家は、このような機能を果たすために、どのような刑罰を設け、それをどのように使ってきたのであろうか。