給料激減で節約生活を強いられるドライバーも

集英社オンラインでは、現場ドライバーの「労働環境」についても過去記事(#4#7#8)で報じている。

そのなかで、都内23区のドライバーたちから「人手不足で就業時間内に荷物を配達しきれない」「でも休憩を取っていないと上司に注意されるから虚偽報告している」などの悲痛な声もあがっていることを紹介した。

だが、ドライバー不足が懸念される「2024年問題」への対策としてか、ヤマト運輸では4月以降ある変化が起きているという。都内23区のドライバーたちはこう証言する。

「今年4月ごろから厳しく労働時間を管理されるようになったので、夜に不在票が出た場合は、翌日に再配達するようになりました。

いわゆる『7-9』と呼ばれる最後の配達時間では、これまで夜7時ごろに一周してみて不在だったら、夜9時ごろに再配達に行かなきゃいけなかった。

そうなると労働時間が延びてしまうので、今は一周したら切り上げるようになったんです」(千代田区・SD)

「これまでは朝7時や7時半に出勤して荷物を仕分けして配達に向かってましたが、今は8時半出勤で固定されてます。朝はスキマバイトの人たちに仕分けしてもらうので、出勤したらそれをトラックに積んですぐに配達に向かうようになりました」(新宿区・SD)

これは一見、現場のドライバーにとっては朗報に聞こえるが、実はそうでもないらしい。前述の千代田区のドライバーはこう続ける。

「ヤマト運輸のドライバーの給与は基本給が低く設定されていて、荷物の集荷量で決まる『インセンティブ』や『残業代』で稼いでいる人がほとんど。

自分の場合、住宅街エリアを担当しているのでインセンティブはあまり付きませんが、そのぶん『7-9』の配達希望が多いため残業代は月に12~3万円ほど支給されていました。

しかし、今はとにかく早く切り上げなきゃいけなくなったので、給料もガクッと下がりました」

現在の残業代はおよそ7万円。同じセンターの同僚たちも給料が減ったことで節約を余儀なくされており、「こんなことになるなら以前のほうがよかった」との声もあがっているという。

また、前出の新宿区のドライバーは「月の労働時間を減らすために、勝手に有給を使われた」とため息をつく。

「労働時間の管理が厳しくなってからも、これまでと荷物の量は変わらないので、残業するしかない日もあります。ところが残業を続けると、月の労働時間を無理やり減らすために有給を勝手に使われる。

もともと有給って自分から取得するものなのに、センター長に『お前、今月ヤバいから有給ここで入れてな』と強制的に有給を消化させられました」

ヤマト運輸の本社が入っている西新橋1丁目ビル(撮影/集英社オンライン)
ヤマト運輸の本社が入っている西新橋1丁目ビル(撮影/集英社オンライン)
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こうした現状についてヤマト本社はなんと答えるのか。質問状を送ったところ、以下のような回答があった。

「当社は、EC化の進展やお客さまのニーズ・流通構造の変化など、社会・事業環境の変化に対応するため、ネットワーク全体の品質・効率性の向上に取り組んでいます。

また、『2024 年問題』など物流業界が抱える社会課題の解決に貢献し、持続可能な物流サービスの実現に向けて、様々な取り組みを進めておりますが、いずれのご質問も個別の事案のため、回答は差し控えさせていただきます」

ヤマト運輸の社訓は「ヤマトは我なり」。社員一人ひとりが「自分はヤマトを代表している」という意識で行動してほしいと創業者が制定した「社訓」だが、この思いをもった社員はいったいどれだけいるのだろう。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班