「お店で実際に買い物をされましたか」

今日は全国展開をしているスーパーマーケットチェーンのマネジメントをしている井口常務を招いての勉強会です。

井口さんに対して「こんな現場活動を進めていきたいがどう思うか」「小売店から私たちに望むことはどんなことがあるのか」という質問をしながら活動のヒントにするというものです。

こちらからの問いかけが一区切りついた頃です。井口さんが私たちを見回してこう問いかけます。

「皆さんの取り組みは素晴らしいと思います。お客さんの生の声は少々厳しいものでも自分たちのお店づくりに活かしていきたいですね」

「営業のプレゼンが通らない…」その理由がわかる“たった1つの質問”…日本一コカ・コーラを売った男性が学んだ仕事の基本とは_2

井口さんが続けます。

「ところで皆さんはそのアンケートをとったお店で実際に買い物をされましたか。私どもは全国チェーンなので共通のフォーマットでお店づくりを行い、売り場も統一されたものになっています。

しかし、実際のお店づくりや売りモノは、それぞれの立地によって少しずつ変えていかなければ地元に密着した存在にはならないのです。その違いやちょっとした工夫は実際にそのお店を利用しないとわからないのです。

皆さんがアンケートの結果だけから提案を考えているのであれば、そこには皆さんの思いが宿っていないことになります。そのお店のカゴを持って実際に買い物をしましたか。店内のお客さんの様子をご覧になりましたか。そこの惣菜を食べてみましたか。そうしているのであれば、その時どのように感じましたか」

「営業のプレゼンが通らない…」その理由がわかる“たった1つの質問”…日本一コカ・コーラを売った男性が学んだ仕事の基本とは_3
すべての画像を見る

私たちは返事に窮します。

確かにその通りです。私たち営業に携わる者の間では「顧客視点」や「現場を起点として考える」という言葉を使いますが、それを心底理解するための行動をしているのでしょうか。

「おそらくこういうことなんだろうな」と考え、人から聞いた話や調査データだけで相手の視点に立っていると思い込んでいるのではないかと気づかされました。井口常務のお話はとてもシンプルで最も大切な部分を指摘しています。井口さんがさらに続けます。

「私たちはお店づくりに関する提案を数多くいただいています。その時に毎回私が質問することの一つがこれです。私たちのお店で買い物をしたことがない営業の方の意見はこちらには届かないですね」

あらゆる仕事の基本がこの言葉に詰まっています。

文/山岡彰彦 写真/Shutterstock

コカ・コーラを日本一売った男の学びの営業日誌 (講談社+α新書)
山岡 彰彦
コカ・コーラを日本一売った男の学びの営業日誌 (講談社+α新書)
2024/6/20
990円(税込)
208ページ
ISBN: 978-4065361092

人はいつからでも、どこにいても成長できる!
Fラン大学出身、四国のボトリング社に入社するも、高松本社勤務の大学同期とはスタート地点から差をつけられて高知営業所のルートセールススタート。最初は「いつ辞めるか」だけを考えていたダメ新人が、セールス日本一、そして全国のボトラー社でも前例のない日本コカ・コーラ社への出向を果たす。
その裏には先輩・取引先をはじめ多くの人から教えてもらった机上ではけっして教われない「学び」があった。
大学・企業でも話題の、どんな仕事にも生かせる普遍的な学びを明かす。

〇習慣を味方につける
〇「売ってくる」のではなく、「買っていただく」
〇行動は言葉より雄弁
〇人は「自分事」で動く
〇枠の中で考えるのではなく枠をどうするか考える
〇昨日までの自分を模倣しない
〇見方を変えれば違うものが見えてくる
〇礼儀正しさと傾聴は最強の武器になる
〇「なぜその仕事は必要なの」を問い続ける

amazon