お笑い界を牽引するスタープロデューサー
『ゴッドタン』(テレビ東京)などの佐久間宣行と『水曜日のダウンタウン』(TBS)などの藤井健太郎の2人が、お笑い番組の作り手としてトップを走っていることに、もはや異論を挟む者はいないだろう。
そんな2人が奇しくもほぼ同時期にそれぞれ「仕事術」と冠した書籍を上梓した。佐久間宣行による『佐久間宣行のずるい仕事術』(ダイヤモンド社)と、藤井健太郎とWACK代表の渡辺淳之介の対談本『悪企のすゝめ 大人を煙に巻く仕事術』(KADOKAWA)である。
偶然にも「ずるい」「悪企(わるだくみ)」と似通った形容詞をつけているのも興味深いが、この2冊を読むと、2人がその考え方や組織内での在り方に至るまで驚くほど似ていることがわかる。
たとえば、藤井は「自称では"常識人"」「『常識を持つ』って大事」と述べ、「サラリーマンとしてちゃんとする」ことの重要性を語っている。佐久間も同様に、サラリーマンとしての基本ともいえる心得を説く。
佐久間の記述はより実践的。たとえば周囲の信用を得るためには、会議の直後に要点を整理して、忘れないうちに解決策やアイデアをアウトプットすれば良いといったノウハウが明快に記されている。藤井が対話を通して、ユーモアを交えて面白おかしく語っていることを、佐久間が方法論として解説するような補完性がこの2冊にはある。
それぞれがテレビ東京、TBSに入社した2人。局のイメージは大きく違うが、こと「お笑い番組」というジャンルにおいては共通点も少なくない。
入社当時のテレビ東京にお笑い番組がほとんどなかったことは、佐久間が様々な場面で語っている通り。一方でTBSも、「芸人さんがメインのバラエティ番組がほとんどなかったんですよ。吉本との距離も近くなかったし、『ガチンコ!』とか『学校へ行こう!』みたいなジャニーズバラエティがTBS内ではメインになっていて」と藤井が言うように、「お笑いと向き合う」バラエティの歴史が途絶えていた。
そんな中で藤井は入社2年目、佐久間は入社3年目という異例の速さで、自分の番組を持つことになる。その秘訣はなんだったのか。