一度は福祉に頼るも出戻りしてしまうホームレスたち
実際に、東京都が発表した「路上生活者概数調査」によると、令和6年(2024)6月時点での都内23区の路上生活者数は372人で、令和5年(2023)8月時点の385人よりも13人減少している。
だが、「数字の上下はあれど、路上生活者はいなくならないのが現状です」と語るのは、前出の國友氏だ。
その理由としてあげられるのが、路上生活者の”気質”にあるという。
「路上生活者が生活保護を受ける場合、すぐにアパートなどに入居するのは難しいため、まずは一旦、社団法人などが運営する『無料低額宿泊所』への入所を案内されるケースがほとんど。
こういった施設は相部屋が多く、集団生活を余儀なくされるわけですが、もともと彼らは集団生活を営むことが得意じゃないからこそ社会に馴染めず、ホームレスになっている側面もあります。
関与する行政によっては簡易宿泊所に入る人も少なくありませんが、その場合も同じような元・路上生活者など人付き合いが苦手な人が集まるわけですから、そうした生活に耐えきれずに元の生活に戻ってきてしまう。
また、路上生活者を受け入れる施設のなかには『貧困ビジネス』と呼ばれる、ホームレスから搾取している団体もあります。6人1部屋のタコ部屋に押し込まれ、食事や家賃などは生活保護費から天引きされるため、手元には2万円ほどしか残らない。
そうした話が路上生活者に伝わり、福祉に対する悪いイメージが広がっているのも理由のひとつでしょう」
28日夜、都庁の第一庁舎と第二庁舎の間にある「ふれあい通り」を訪れると、ガード下には段ボールでできた自作の“家”がズラリと立ち並んでいた。
寄付金を集めるためだろうか、通りに腰かける男性は自作の賽銭箱を抱えており、近くを通ったサラリーマン風の男性に「お願いします」と頭を下げている。
なかには、「MONEY BOX」と書かれたカゴをぶら下げている家もあり、その上に「日頃よりご支援感謝します」というメッセージボードまで掲げていた。
通りでタバコをふかしていた路上生活歴3年の60代男性は、「一度は福祉に頼ったけど、耐えきれずにこっちに戻ってきたんだわ」と話す。
「ちょうど1年前くらいかな? 生活保護を受けるってなって四畳一間のアパートに住んだことあるけど、ありゃダメだね。ドアにカギがかからないほどボロかったし、それが原因で何度か空き巣に入られたから。
金はいつも持ち歩いてるから大丈夫だったけど、充電ケーブルとかポットは盗まれた。どうせ犯人は同じアパートのヤツだと思って、それで『盗んだモノ返せ』と言ってもトボけるもんだから、殴り合いのケンカに発展したこともある。
福祉(の担当者)に相談してもカギの件は応じられないとか言うから、それでムカついてこっち(新宿)に戻ってきたんだわ。
やっぱりここが一番ラクだし、誰にも気をつかわなくていいからね。こうやって生活してると、炊き出しとかおにぎりももらえるからメシにも困らないし」
「ふれあい通り」からほど近い東京都庁の壁面には、この日も色鮮やかなプロジェクションマッピングが映し出されていた。
取材・文・撮影/集英社オンライン編集部ニュース班