戸田奈津子「会った女性みんながメロメロに」ケヴィン・コスナーが愛された理由とは…90年代ハリウッドを席巻した大スターの見るべき1本_1

時代を席巻した大スター

1990年代に何度も映画のプロモーションで来日していたので、私もずいぶんお仕事をご一緒しました。会った女性がみんなメロメロになるくらい、魅力にあふれるスターでね。記者会見ではユーモアを交えつつ自分の意見も言うし、最後にはしっかりかっこいい言葉で締めくくるので、期せずして満場の記者から大拍手が湧いたほどです。

記者会見に集まるマスコミの人たちは、大抵は”クールなプロ”という顔をしているので、こういう反応は滅多にないのです。

『アンタッチャブル』(1987)や『ボディガード』(1992)などたくさんの映画に出ているけれど、私が好きな映画は『フィールド・オブ・ドリームス』(1989)。ゴーストが出てくる不思議なファンタジーで、描かれる家族愛が感動的でしたね。

俳優だけでなく監督やプロデュース業にも積極的で、『ダンス・ウィズ・ウルブズ』(1990)ではアカデミー作品賞や監督賞を受賞しています。それまでのアメリカ映画は字幕を敬遠して、先住民でもフランス人でもドイツ人でもみんな英語を喋るというインチキをしていましたが、ケヴィンは、劇中に登場するネイティブ・アメリカンに自分たちの言葉を話させて、セリフに英語の字幕をつけるという画期的な演出をしたの。

彼の功績は大きかったと思います。その後の彼は監督作やプロデュース作が興行的に失敗したこともあり、主演映画がないのが残念ですが、一時代を席巻した大スターだったことに間違いはありません。

語り/戸田奈津子
アートワーク/長場雄
文/松山梢