黙って演じなきゃいけなかった時代があった
あっと驚く大胆でショッキングな内容の『哀れなるものたち』(2023)は、とてもおもしろい映画でした。非常にお金のかかっている衣装もすごかったし、主演を務めただけでなく、プロデューサーとして作品の一端を担ったエマ・ストーンのチャレンジ精神はすごいと思います。
今でこそ製作に関わる俳優は多いけれど、かつてはゲイリー・クーパーほどの大スターだって映画会社と「年間◯本」という契約を結ばされて、いやでも黙って演じなきゃいけなかった時代があったんです。
まして女優は歳をとると演じる役が少なくなくなるし、男性主人公の横で刺身のつまのような役しかもらえなかった。自分で企画を立て、映画を作るなんてありえませんでした。
そういう意味でエマ・ストーンを始め、最近の女優たちの活躍は女性の地位の大きな変化を感じさせます。現代女性の進化に大きな拍手を送りたいし、彼女たちがこれからのハリウッドの新しい旗手になると期待しています。
語り/戸田奈津子
アートワーク/長場雄
文/松山梢