公明にとっても厳しい選挙戦の予想

追い詰められた岸田首相をさらに揺さぶったのは公明党だ。

政治資金規正法の改正案を巡っては、自民が主張した政治資金パーティーのパーティー券購入者の公開基準「10万円超」が甘すぎるとして、公明が共同提出から離脱。

自民は譲歩案として法案を3年後に見直す規定を盛り込んだが、公明の山口那津男代表がBS11の番組で修正が不十分だと主張、改めて公明が当初出していた「5万円超」の案を取り入れるよう求めた。

その結果、最後は岸田首相が山口代表と直接会談し、自民が全面的に折れる形で「5万円超」を受け入れるに至った。

このように、与党内の協議ですら混迷を極めた理由について、公明党周辺は「自民が裏金問題で大逆風を受けるなか、公明としては同じ穴のムジナと思われないよう、絶妙な距離感が求められていた。さらに4月中旬からは公明内で自民とのパイプ役を担ってきた高木陽介政調会長が病気のため入院。調整役不在で修正協議が二転三転してしまった」と分析する。

公明党・山口那津男代表(本人Facebookより)
公明党・山口那津男代表(本人Facebookより)

その公明も岸田首相による早期解散には猛反対していた。なぜなら、次期衆院選は公明の今後を左右する重要な選挙であるからだ。

公明はこれまで大阪府内で日本維新の会と選挙協力を行ない、4つの小選挙区で勝ち上がってきたが、昨年の統一地方選で地方議員数を増やした維新が態度を一変させ、選挙協力を解消し公明の選挙区にも候補者を立ててきた。

公明は大阪で議席を減らすことが確実視されたため、代わりに埼玉、東京、愛知の小選挙区で新たに候補者を擁立し、それを自民が推薦することで合意。

しかし、次期代表と目される石井啓一幹事長が埼玉14区で苦戦するとの情報もあり、公明にとっては厳しい選挙戦になることがすでに予想されている。

公明としては少しでも政権の支持率が高いときに解散して、なんとか党勢の縮小を食い止めたいと考えているため、岸田首相が自分の都合を優先して低支持率のまま選挙に突っ込んでいくのは到底認められないわけだ。

こうした公明党の意向に最後は押し切られるような形で、岸田首相の早期解散戦略は幻となって消えてしまったと言えるだろう。