「延命はしなくてもいいです」という飼い主も

たしかに老犬ホームに預けるというと、どこか後ろめたい気持ちを持つ人もいるだろう。だが、それでも老犬ホームに預けなければならない事情を抱える高齢者が多いのだ。
 

「飼い主様がご高齢になり、お散歩やご飯などこれ以上、満足のいくお世話をしてあげられないと思って仕方なく預ける方や、ご自身が老人ホームなどの施設に入ることが決まって犬が飼えなくなってしまった方もいらっしゃいました。

そういう方でも、うちの老犬ホームでは面会ができますので、週に1回会いにくる方もいらっしゃいます」(同)

この施設では、老犬ホームを利用する際、スタッフと飼い主との間で面談が行なわれる。今後ペットをどうしたいのかという意向を、しっかりと聞き取っているそうだ。

THEケネルズ東京で預かる小次郎くん(19)は目が見えず、立つこともできないため、車いすに座った状態でスタッフが食事を与える
THEケネルズ東京で預かる小次郎くん(19)は目が見えず、立つこともできないため、車いすに座った状態でスタッフが食事を与える

「例えば発作が起きたとき、すぐに救急病院に連れて行って心肺蘇生まで行ないたいかどうかなどをうかがいます。すると『老犬ですので延命はしなくてもいいです。自然に任せてください』とおっしゃる方も多いんです。

18歳くらいの子は、万が一のことがあるというお話はしますが、飼い主の方もある程度覚悟をされていて、『ここまでがんばってくれたんだから』とおっしゃる方が多いですね」(「THEケネルズ東京」の老犬ホームで働く板橋かおりさん)

ペットホテルや動物病院のような一時的な預かりに比べ、老犬ホームはペットと長期に渡って関わりを持つことになる。スタッフは自分が飼い主になったようにペットと向き合うだけに、“万が一”の話をするのは辛いという。