輸入牛肉の価格が5年で1.4倍増! 業態によっては好調だが… 

だが2022年以降、世界有数の穀物輸出国であるウクライナの戦争による混乱や、干ばつなどを背景に、牛のエサとなる飼料の価格が高騰。輸入牛肉の仕入れ価格は財務省「貿易統計」によると過去5年で1.4倍も上昇した。

さらに円安による輸入コストの増加も加わり、各社ステーキ店の値上げが相次いでいる。

いきなり!ステーキでは、2024年4月3日より、「ランチワイルドステーキ 150g」(ライス・サラダ・スープ付き)が1,390円(税込)から1,560円(税込)に。もっとも大きな値上げは「特選ヒレステーキ 300g」で、4,200円(税込)から4,630円(税込)と430円もの値上げとなった。

これまでにも段階的な価格改定はあったが、オーダーカットの廃止、一部メニューに使用する牛肉を米国産から豪州産に変更、ポイントサービスの見直しなど、開店以来最もインパクトのある価格調整となったのだ。

値上がりした、「いきなり!ステーキ ワイルドステーキ 150g」の写真 撮影 福永太郎
値上がりした、「いきなり!ステーキ ワイルドステーキ 150g」の写真 撮影 福永太郎

だが前出の堀部氏によると、影響を受けないステーキ店もあるという。

「ステーキ店の業態は大きく分けると『レストラン型』『ロードサイド型』『繁華街・オフィス立地型』の3つになります。
レストラン型の代表的な店舗は『ウルフギャング・ステーキハウス』のような高級業態。デートや接待といった用途でも使われ、サービスやお店の雰囲気にもバリューがあるため、そもそも値上げの影響を受けにくい。

ロードサイド型は交通量が多い幹線道路沿いに面し、ステーキやハンバーグが名物になっている業態を指します。ロードサイド型はステーキ専門店ではないため、利益率の高い商品と低い商品を組み合わせることで利益を調整する粗利ミックスという手段が取れます。
たとえば、原価率の高いステーキと原価率の低い鶏肉をセットにして提供することなどで全体としての原価率は抑えられるため、物価高の影響を上手に回避しています」

よって、ロードサイド型の人気店「ブロンコビリー」は2024年1〜3月期の連結決算で純利益が前年同期比2.8倍の5億2,700万円となり業績は好調だ。

ここで苦境に立たされているのが、いきなり!ステーキを代表とするリーズナブルな価格でステーキを提供する繁華街・オフィス立地型である。

「繁華街・オフィス立地型は、まさにいきなり!ステーキが切り拓いたマーケット。ビジネスパーソンが昼休みに低価格でステーキをガッツリ食べるという需要を作り出しました。
ただ消費者はあくまで“低価格で”食べることが来店目的だったため、値上げにより客足が遠のくことは避けられないでしょう」

なお、ホットペッパーグルメ外食総研が2024年4月に発表した調査によると、働く人の平日ランチの外食予算は1,243円だった。 仕入れ価格が高騰する現状では、予算内でランチにステーキを提供するのは困難だろう。