「運動はしたいが続けられない」
人がやってはいけないこと
定年後を見据えて、「運動習慣はなかったが、やはり運動をしたほうがよいのか」と考える人は多いようです。確かに、職場に毎日通勤する人が、定年後は自宅にずっといるようになれば、それだけで運動量は大幅に低下し、運動不足になりがちです。
コロナ禍の外出自粛の時期には老若男女を問わず、多数の人が同じ問題に直面したことでしょう。運動不足の影響は歳をとるほどに大きくなります。特に高齢者は、使わない筋肉が萎縮する「廃用性萎縮」が起きやすいことに注意が必要です。風邪をこじらせたり骨折したりなどでしばらく入院するだけで、退院時には歩くのも困難になるような状態が生じやすくなります。
年齢を問わず、使っている筋肉については、その負荷に応じて新たに作られる仕組みを持っています。ところが新しい筋肉を作る機能は、加齢に応じて低下してしまいます。筋肉を合成するのに働く成長ホルモンや男性ホルモンが減少し、食事で摂取したタンパク質が分解されて作られるアミノ酸から、筋肉が合成されるまで時間がかかるためです。
その結果、歳をとるほど、運動不足などの影響が若い頃よりも出やすくなるわけです。毎日の通勤がなくなる定年後に運動不足になることが明らかな場合、新たな生活習慣として筋肉を動かすための運動を取り入れることが対策になるのは間違いありません。
走ることが好きならジョギングがいいでしょうし、バッティングセンターやゴルフの打ちっ放しが好きでストレス解消になるという人は、筋肉の量を減らさないためにも、ぜひ続けることをお勧めします。
運動は「無理にはしない」
ただし、ストレスになるような運動の仕方は避けるべきです。日本人の死因第1位のがんをはじめとする様々な病気の予防には「免疫力の向上」が重要です。ストレスは免疫力の低下を招きます。運動習慣のなかった人が嫌々ジムに通うとか、心身に鞭を打つようにしないと始められないという人は、あえて運動すべきではないでしょう。
かくいう私も運動が大嫌いなので、一切していません。ただ、糖尿病があることがわかってからは、毎日歩くように心がけています。移動の際には1駅分だけ余計に歩くとか、なるべく一日30分以上は歩くようにしています。
また、運動を頑張りすぎる人はかえって老化が進みやすいことも指摘しておきます。カロリーを消費して効率よく脂肪を燃焼するには「有酸素運動」が推奨されますが、有酸素運動は体を酸化させる活性酸素も大量に発生させるものです。活性酸素は細胞レベルで老化を進めてしまうので、有酸素運動は活性酸素対策とセットで行わなければ、筋肉をつけるどころか老化が促進されてしまいかねません。