「最初で最後」の挑戦をしなければ人の心は動かせない
――蓋をしただけで、まだ松岡さんの中にあるわけですね。
はい。その正体をちゃんともう一回確認しなきゃダメだって、僕はずっと思っていて。それは、本当に心が荒むようなことだったのか。もしかしたら、あの頃ネガティブにとらえていたことの中に、誰かの優しさという宝が見つかるかもしれない、と。
当時は、そのネガティブなものが松岡充やSOPHIAの音楽の原動力になっていて。「ゴキゲン鳥」なんて、言ったらもう、嘆いてる曲じゃないですか。そして最後、「問題は俺か?」って、蓋をしてる。オマージュという作業の中でそういった当時の感情に向き合うことが挑戦になっていくんじゃないかなと思います。
――蓋をした思いは今も忘れずに、引き出すことができるんですか?
引き出せます。でもそのためには、それに向き合うための体勢をとらなきゃいけない。それが今のこの活動なんですよね。そんな簡単に、パカッと蓋を開けて「ああ、こんなだったな」で向き合えるレベルではないので。そういう意味では、これが最初で最後って思えるようなトライをしていかないといけなくて。
これが最後なら、「こんな甘いジャッジはないな」とか「こんなモヤモヤした気持ちで進めていくのはイヤだ」って感じると思うんです。そういう気持ちで向き合わないと、人の心を動かしたり、人の人生に影響を及ぼす誰かにはなれないし、そういう作品も創れないと思う。