時代を超越したテーマに向き合うときが来た

――2020年の『Holy Nights』と2021年の『Imaginary』は、コロナ禍が重なったこともあり、そんな困難な時代に向き合って作ったアルバムでしたよね。

MIYAVI(以下、同) そうですね。

――その点、今回の『Lost In Love』は今やりたい表現をピュアに追求したアルバムだと思うのですが、「Duality(二面性)」というテーマや2部作の形態も含めて、このアルバムを作るに至った経緯は?

アルバムを作る上では、時代時代で自分に影響を与えたこと――たとえばコロナや難民支援の活動も含めて、僕が感じたものから自然に生まれてくるものがあって。今回も、ウクライナ情勢やイスラエルとパレスチナの問題に対しても自分なりに思うことがあって、そこから「Tragedy Of Us」という曲を書きました。

だけど、今回の根本にあるテーマは、自分と対峙すること。

「強さとは何か?」って考えたとき、その強い、弱いっていうのは結局、比較でしか判断できなくて。比較しなければ何もなくなって自分しか残らないけど、じゃあ、そのときに自分とどう対峙するかというと、――いろんな要素がありますよね。そこでは自分の中にある理性と本能、強さと弱さ、喜びと悲しみというような、二面性を見なければいけないと思うんです。

MIYAVIさん
MIYAVIさん

僕自身でいうと、たとえば(国連難民高等弁務官事務所=UNHCR)親善大使としての僕は、ポジティブなことを歌っていたいし、聴いてくれる人たちに、聴いてよかった、そしてもっと強くあるためにがんばろう、と思ってもらえる活動をする。だからそういったメッセージ性を楽曲に込める。でも一方で、僕自身も弱い部分や葛藤、いろんな悩みや欲望を抱えたひとりの人間として生きていて、そういった光と闇のような二面性は、確実に存在している。

僕たちは、なぜ生きているのか。いつかは来る死に向かって毎日を過ごしているわけじゃないですか。そんな中で自分とどうやって向き合っていくか。僕もそういう感覚で自分と向き合ってきたし、今後、時代を超越して残る作品として、人間の強さと弱さ、光と影。そこを大きなテーマにアルバムを作りたいと思ったんですよね。

そういった二面性というテーマの持つコントラストを根幹に、いろんな色の、いろんなベクトルの楽曲を作ろうと思って取り組んだのが今回のアルバムです。