② 教育的意義があると思われているから
前述の生徒の「荒れ」への対応策としての側面もあるが、部活動によって規律や自己肯定感を高めるなどの教育的意義が挙げられる。筆者も学生時代はずっと(好きで)サッカー部に所属しており、その意義は否定しない。ただ、部活動を通してしかそういった規律や努力の方法などを学べないかというと、全くそんなことはない。
全然やる気もない部活動を強制的にやらされても、むしろ嫌いになる可能性の方が高いのではないだろうか。また同じ学校内だけの部活だと、非常に狭い、閉じた関係性になるが、学校外のコミュニティに参加することができれば、その分様々な人と知り合うこともでき、種類が限られた部活動よりも、趣味の範囲が広がる可能性も高い。
よく「生徒数の減少で部活動の数を維持できなくなっているから」という声も聞くが、そもそも同じ学校内で様々な部活動をやってきたこと自体、異常だったのではないだろうか。実際、他の国々では部活動はあまりなく、地域コミュニティの一環でクラブが存在する。
生徒の部活動強制加入や、教師の全員顧問就任、無報酬によるタダ働き、そうした「犠牲」の上に成り立っていただけである。
そして子どもの減少や、教員の多忙化によってこれまで以上に無理が生じており、見直すべき時期に差し掛かってきている。
「部活動をやっていないことで、関わる先生が減るため、色々な見方からの指導ができなくなる。地域によっては、部活動をやって子どもを疲れさせてから帰らせたり、休日も学校に行く必要を作り出すことによって、地域の治安を維持していたりすることもあるから。また、受験時に部活動で頑張ったことを聞かれたり、資格や成績によっては推薦の条件にあてはまることがあるから」(学校現場の声を見える化するWEBアンケートサイト「フキダシ」)
「部活動は教育課程外の活動なので、それを必須にして生徒の意思を無視した状態で行うのはおかしいと思います。放課後の時間は個人のものであり、自由選択で自分らしく生きられる時間として位置づけてあげたいです。
また生徒を必須加入させることは、教師も必須担当(指導)せねばならぬ状況につながります。勤務時間内ももちろんですが、勤務終了後や土日のボランティア参加等、こちらも本人の意思に反して半強制的に行われます。必須加入かそうでないかに関わらず、この法外な働き方は大きな問題をはらんでいます。
世界各国を見渡しても、かなり異質な教育活動。同質性を押し付け、それぞれが個性豊かに生きることへの不安を植え付けます。多様な生き方を尊重する意味でも、部活動は自由選択であるべきだと思います」(同アンケート結果)
③ 部費を生徒会費として全員分徴収しているから
意外と知られていないのが、部活動に関するお金のやり取りだ。部活動をやる場合には、もちろんその部活に関連した費用はかかるが、「学校諸費」として、生徒全員から徴収されている。その名目は必ずしも「部活動後援会費」のような「部活動」に限定されず、生徒会費として徴収されたお金が部活動に回っている場合もある。
学校側からすれば、全員からお金を徴収しているため、全員に部活動に入ってもらわないと困る、という理屈である。
④ 中体連等への加盟費を全校生徒の人数分、支払っているから
こちらも費用に関係しているが、中体連等、大会を運営している組織にお金を払っているために、全員部活動に参加すべきであるとなりやすい。
逆に言うと、中体連としては、大会等の維持運営のために全員からお金を徴収しなければ成り立たない、という論理もある。
⑤ 内申&入試に影響するから
部活に入るべきという圧力は、必ずしも学校(教員)からだけではない。高校入試に影響するため、保護者が入るのを勧めるというのもある。実際、地域によっては、部活動の成績が内申点に加点されており、部長をやっていれば、入試に有利に働きやすいというのもある(噂も含め)。
⑥ 同調圧力
学校入学の最初の1学期だけ加入という学校も珍しくない。その後は、任意で辞めて良いというものである。しかし実際は、中学生が学校の先生に「辞めたい」というのはハードルが高く、学校によっては、顧問だけでなく、3人の教員のサインが必要としているケースもある。これでは暗に「辞めるな」と言っているようなものである。
ある国立の中学校では、こうした事態を防ぐために、毎年入部届を出す仕組みにしており、辞めるハードルを下げる工夫を行っている。