目撃情報のあいまいさ

2023年9月5日、アメリカで画期的な判決が下されました。1976年に2つの強制性交事件などで有罪判決を受け約7年半服役した黒人男性が、50年ほどの歳月を経て無罪判決を得たのです。

DNA判定により真犯人が特定されたことが理由でした。この事件では、被害者である2人の少女の目撃証言が決め手となっていたのですが、実は警察の誘導的な犯人識別手続きがあったことが明らかになりました。

アメリカでは、こうした目的証言の問題点を浮き彫りにする活動が盛んで、1992年には、ニューヨークのイェシーバ大学にイノセンス・プロジェクトと呼ばれる団体が設立されています。

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これは、DNA鑑定などの科学的証拠によって冤罪を晴らす活動を無償で行うもので、今回の無罪判決も、この団体とウェストチェスター郡地方検察の協力によって実現しました。イノセンス・プロジェクトによれば、彼らが無罪を勝ち取った冤罪事件の約64%が、目撃者の誤った証言が原因だったと報告されています。

冤罪事件の検証に検察が協力していることに驚きを感じる人も多いと思いますが、アメリカでは、目的証言が冤罪の原因になっていることについて、連邦や州の当局も問題意識を共有しています。

1999年には、米国司法省の司法研究所が目撃証拠の適切な扱い方をまとめたガイドライン「目撃証拠:法執行のガイド(Eyewitness Evidence:A Guide for Law Enforcement)」を公開しました。

2014年には、米国学術研究会議(The National Research Council)が、「犯人の識別:目撃者識別の評価(Identifying the Culprit:Assessing Eyewitness Identification)」と題する報告書を公表し、さらに2017年には、ニューヨーク市が、イノセンス・プロジェクトの提唱した目撃証言の聞き取り方に関する基準とベストプラクティスを採用する法律を可決しています。