お得意の「解散風あおり」も封印
「課題について結果を出すことが重要だ。それ以外は現在考えていない」
5月4日、訪問中のブラジル・サンパウロでの内外記者会見で、衆院解散について問われた首相は、淡々と語った。
出発前、30日の記者団の取材には衆院解散について「まったく考えていない」と厳しい表情で答え、これまでの「今は考えていない」から「今は」が消えていた。いずれにせよ、かつて解散風をあおっていたような余裕はなくなっている。
全国紙政治部記者はこう解説する。
「これまで首相は解散について問われたときにニヤリと笑みを浮かべることもあり、解散権をちらつかせることで、求心力を保ってきたのです」
それが、「まったく考えていない」と変化した背景には何があったのか。
「3補選の中でも、とくに島根1区の結果が衝撃的でした。2009年の政権交代時でも自民が勝てていた選挙区だったにもかかわらず、今回は投票締め切りの午後8時と同時に立憲の亀井亜紀子氏の当選確実が報じられるほどの惨敗。
『島根1区でこの結果なら、衆院選をしたら全国的に散々な結果になってしまう。何とかして早期解散は止めたい』と自民党内の危機感は高まりました」(同)
それだけに岸田首相としては、ささやかれていた6月解散の観測を打ち消し、「岸田おろし」の芽を摘んでおくことを優先した形だ。