オーダースーツ比率を高めて顧客単価引き上げに挑戦
AOKIはクイックオーダースーツを導入した。これは60サイズから最適なものを選択するという、オーダー感覚のサービスだ。既製品から選択の幅を広げたが、レッドオーシャン化しつつあるオーダースーツ市場に本格参入したとはいえない。
この領域に真正面から飛び込んだのが青山だ。2024年3月期上期に未導入だった287店舗のスタッフに基礎教育を行ない、訓練が完了した。オーダー売上比率は前年同期間比で7.0ポイント上昇し、15.6%となった。販売したスーツのおよそ1割がオーダースーツになった計算だ。
しかし、上期のオーダースーツの売上は20億円に過ぎない。今期は58億円を計画している。スタッフの教育に負担がかかる一方で、売上規模は小さいというのが実情だ。
青山は焼肉店や100円ショップなどを運営しているが、フランチャイズ加盟によるものであくまでスーツが主力の会社である。売上全体の7割はスーツによるもので、マーケットの影響を受けやすいのだ。そのため、オーダースーツを本格化するのは必然だったともいえる。
しかし、この市場が決して拡大しているものではないというのは、見てきた通りである。売上比率を高めるには、安くオーダースーツが作れることを新成人などの消費者に訴求しなければならない。そうなれば、巨額の広告宣伝費が必要になる。
青山の2024年3月期第3四半期のビジネスウェアは、10億3500万円の営業利益を出した。黒字転換を果たしたものの、営業利益率は1.2%と振るわない。
スーツ需要が回復しきらず、利益も出ない中で宣伝に注力するという経営判断は下しにくいはずだ。スタッフの提案力でオーダー比率を高めて販売単価を高め、利益率を底上げするという地道な取り組みが続くはずだ。