90年代後半から不動産活用に活路を見出したAOKI

青山とAOKIは地方にスーツ文化を浸透させた立役者だ。

もともとスーツは百貨店で販売されていたものだったが、青山やAOKIは幹線道路沿いのロードサイド型店舗を多数展開した。消費者は混雑する繁華街の百貨店に行く必要はなく、マイカーで気軽に店舗へと足を運べるようになった。店舗側もスーツを購入する目的で来店する顧客だけを獲得できた。そのため、スタッフはファッション全般の知識を身につける必要がなかった。スーツに特化すれば十分なのだ。

顧客にとっても店舗運営側にとってもメリットが大きかったのである。

2023年12月末時点で青山は746店舗、AOKIは595店舗ある。そして両社に共通する特徴が、店舗の土地と建物の多くを「所有」しているということだ。この2社は、生産から販売まで一貫して担っているとはいえ、スーツという表皮を剥ぐと、幹線道路沿いの好立地を活かす不動産業という側面が強いのだ。

不動産活用術で頭角を現しているのがAOKIである。

「AOKI」 写真/shutteratock
「AOKI」 写真/shutteratock

AOKIは紳士服の他に、カラオケの「コート・ダジュール」、インターネットカフェの「快活CLUB」、フィットネスジムの「FiT24」、結婚式場の「アニヴェルセル」などを運営している。コート・ダジュールは1998年、快活CLUBは2003年に1号店をオープンした。AOKIは早い段階から店舗の遊休スペースを活用して収益性を上げる取り組みを本格化していたのだ。

AOKIの売上全体に占めるスーツの割合は5割。ネットカフェやカラオケなどのエンターテイメントが4割、ブライダルが1割程度だ。営業利益率においては、スーツが5.3%でエンターテイメントが6.5%と高い。利益面でAOKIの経営を支えているのはインターネットカフェやカラオケなのだ。

快活CLUBは2023年12月末の段階で店舗数は489。AOKIが498だ。本家とほぼ同数まで拡大している。
2023年3月期はFiT24を23店舗新規出店した。現在はジム経営を強化しようとしている。