900億円もの現金を持つ青山商事
市場の評価も冷静だ。AOKIのPBRは0.79倍、青山が0.48倍である。斜陽化しつつあるスーツ産業において、マーケットに寄り添う選択をする青山と、インターネットカフェやジムなどの人気産業へと鞍替えするAOKIでは、成長への期待感に差が生じる。
ただし、青山は900億円近い現金を保有するキャッシュリッチな会社だ。自己資本比率は50%を超えており、財務状態も極めて健全である。
2015年には、靴修理店「ミスターミニット」を展開するミニット・アジア・パシフィックを買収した。このM&Aは脱スーツ化を狙ったものだった。ミスターミニットは2024年3月期第3四半期に2億3000万円の営業利益を出している。営業利益率は2.3%でビジネスウェア事業を上回る。
買収による事業の多角化で、青山が立て直しを図る余地は十分に残されているように見える。
取材・文/不破聡