ウクライナの破壊工作の実態

その秘密の多さから接触が最も難しいとされる「情報機関」の活動を知る、ウクライナや米国、他の西側諸国の関係者を20人以上も取材し、ウクライナの戦いに米中央情報局(CIA)がどう関与していたか。つまり、どう助けていたのかの詳細を米紙『ワシントン・ポスト』が初めて明らかにした。

同記事では同時に、ウクライナ側の情報機関による対ロシア秘密工作、とくに要人暗殺や破壊工作など、ダーティな活動をも明らかにした。そのうち、今回初めて報道された工作内容は以下のとおりだ。

▼昨年8月、モスクワでロシアの著名な戦争推進派の車に爆弾を仕掛け、偶然乗車していた娘の戦争推進派ジャーナリストを爆殺したのは、ウクライナの国内治安情報機関「保安庁」(SBU)
▼今年7月、ロシア南西部のクラスノダールでジョギング中だったロシア海軍元潜水艦艦長を射殺したのはウクライナ国防省の情報工作機関「情報総局」(GUR)
▼今年4月、サンクトペテルブルクのカフェで軍事ブロガーを爆殺したのもウクライナ機関
▼過去20か月の間に、SBUとGURは数十件の暗殺を実行
▼GURは無人機でロシア国内を何十回も攻撃した。モスクワの高層ビルに命中したのも、クレムリン屋上で爆破したのもGURの作戦――。

また、昨年9月にバルト海のパイプライン「ノルド・ストリーム2」が爆破された工作について、米国や他の西側情報機関は、ウクライナ機関が関係していると結論付けているという。なお、こうしたSBUやGURによる秘密工作は、ゼレンスキー大統領の了解がなければ実行されないとのことである。

ウクライナのゼレンスキー大統領
ウクライナのゼレンスキー大統領
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ウクライナの情報機関を支援しているCIAなど西側の情報機関は、こうした破壊工作に基本的には参加しておらず、特に直接的な暗殺には西側情報機関は関わっていないとのことだ。

もっとも、一部の破壊工作の計画を事前に知らされることはあり、CIAがロシア側の反応を警戒してウクライナ側に懸念を伝えることもあった。ただ、黒海でロシア艦艇を水上ドローンで攻撃した際には、ロシア側の過剰反応の懸念が少なかったため、西側情報機関が作戦に協力しているという(※筆者注/おそらく遠隔操作用の通信手段を提供)。