会社を1日で辞めてから2年、今、思うこと…
「初日から研修でした。内容は、やはりスポ根系というか、『声出せ』『キビキビ動け』と指示され、自分がどうなりたいかと大声で叫ばせる内容。『相談しやすいよ』と会社側に言われましたが、自分と会社側の感覚の乖離が、相談したくないと思わせる雰囲気でした。家に帰り、もう辞めたいという思いが限界まで襲ってきました。初日が金曜で、その後に土日がはさまったのもいけなかったのかもしれません」
2022年の4月1日は金曜日。今年とは、ある意味で真逆だ。1日が月曜日であることがつらい一方で、1日が金曜日であることもまた、いろいろなことを考えすぎてしまうのだろうか。
休日、もんてん。さんが研修を請け負っている会社を調べると、そこには過去に自殺者が出たとの記載があったという。これがトドメの後押しとなり、辞めることを決意した。
「4月3日、日曜日の夜に辞めると会社と家族に連絡をしました。事情を聞きたいと会社に呼ばれて向かったのですが、会社に行く前に駅で30分くらい深呼吸していきましたね。怖かったです。説明を終えて、会社から解放されると安心感がありました。
実質仕事をしたのは1日で、4月4日に全てが終わりました。この後実家に帰って、病院に行ったら社会不安障害と診断され、一年間、薬剤治療・認知療法をやることになりました」
現在、もんてん。さんは治療を終え、非正規で働き、YouTubeにMinecraft(マインクラフト)のゲーム実況動画を投稿している。
入社1日で新卒で入った会社を辞めてしまったことについて、あれから2年経った今、どう思っているのだろうか。
「8:2で、辞めてよかったが勝ちます。よかったという感覚としては、あのままの状態で働き出したら、どういうネガティブな結果になっていたか想像もできない、という思いがあるからです。
ただ、あの時健常なメンタル、精神状態で働き続けていたらどうなったのだろう…という後悔はあります。会社と合わないとは思っていましたが、そこに決めた理由ももちろんあるので、辞めてから、少し思い返すこともありました。しかし、死ぬよりはよかったかなと感じているし、もう一度あそこで働こうとは全く思いませんね」
現在、SNS上では新入社員の悲鳴ともいうべき書き込みが相次いでいる。〈研修がしんどすぎてまだ三日目なのにもう辞めたい〉〈もう辞めたい。仕事暇すぎて時間の無駄でしにそう〉〈集団行動苦手すぎて研修2日目にしてもう辞めたい〉などなど…。
最後にもんてん。さんに、そういった新入社員に対してのアドバイスをうかがった。
「会社に所属し続けることによって、社会人としての知識とか、人との信頼関係とか多くのことが身につくでしょう。1日で辞めるという方、入社してすぐに辞めるという方は、そのチャンスを手放すことになります。私はそれを少し後悔している一人です。
ただ、それを抜きにしてでも、『辞めたい!』『こんな会社嫌だ!』って思ったら、素直に気持ちにしたがって辞めてしまうのも、一つの手だと思います。続けた先にも、辞めた先にも、人生は続いていく。どちらを取るかは、皆さん次第だと思いますが、変化をパワフルに受け入れられれば、決断もしやすいかなと思っています」
新卒社員たちは今、はじめて社会に出てたくさんの大変なことに遭遇していると思うが、まずは自分の健康を第一に考えてほしい。
取材・文/集英社オンライン編集部