むしろ「勝ったような気持ち」で「いいね」を押すべし

トリは、漫画家でコラムニストのカレー沢薫さん。「SNSでの幸せアピールに辟易している私はどうしたらいいでしょうか?」という20代後半の女性からの相談です。SNSで結婚や出産の話題を見るたびに「なんとか流れに乗らねばと焦って」しまうとか。カレー沢さんは、SNSは「敵将の首置き場」だと言います。置いた人間にとっては手柄や幸福でも、関係ない人間が「グ、グロい…」と感じるのは当然だとも。さらに、こう続けます。

〈よってまず、「友達の幸福を妬むなんて自分はなんて小さい人間なのか」などと思うのはやめましょう。むしろ、生首を見て平然としている方がサイコパスっぽくて怖いです。(中略)それにSNSで幸せアピールしている人間も、実は内心不安で、自らの選択が正しかったと信じたいがために、SNSに載せて「いいね」という後押しを求めているとも言えます。ここは一つ、まだ「悩みの種」を持っていない身軽な者として、相手を崖から突き落とすつもりで「いいね」を押してあげる余裕を持っても良いのではないでしょうか。〉
初出:WEBマガジン「キノノキ」に連載されたコラム「カレー沢薫のワクワクお悩み相談室」(2018年2月~2019年9月)。引用:カレー沢薫著『カレー沢薫のワクワク人生相談』(太田出版、2021年刊)

幸せアピールに対して「いいね」を押すことは、けっして負けを認める行為ではありません。カレー沢さんの言うように、崖から突き落とすつもりで押せば、むしろ勝ったような気持ちを感じることができるでしょう。それでいて押してもらった側は「ああ、祝福された」と感じるので、いわばウイン-ウインです。どっちも気のせいですが、SNSなんて「気のせい」の塊ですから、そこは深く考える必要はありません。

「世界のムラカミ」さんら、各界の賢人たちはSNSの悩みに何と答えてきたのか?_3

「SNSを上手に使う」「SNSと適度な距離を取る」というのは、言うは易し行うは難しです。見果てぬ夢を追うと、できない自分をさらに責めることになるでしょう。SNSは、元カレ元カノの情報や他人の幸せアピールといった、見なくていいものを見せてくれるだけでなく、自分の弱さや醜さを見せつけてくれるツールでもあります。せっせと使っている私たちは、自分を痛めつけるマゾヒスティックな刺激に溺れているのかもしれません。

「世界のムラカミ」さんら、各界の賢人たちはSNSの悩みに何と答えてきたのか?_4

(イラスト、マンガ/ザビエル山田)