サイバーおかん誕生のきっかけは東京オリンピック2020 

電飾がきらめく夜の街・秋葉原を練り歩く、ひときわ異彩と光彩を放つ人物がいる。

「日本の夜が暗くなっている」。“サイバーおかん”タナゴが目指す「日本サイバー化計画」ってナニ?_a

電飾の付いたサンバイザーに基板柄の着物、そして背中には「電脳」の文字が輝くネオン管のディスプレイ……。“歩くSF映画”とでも呼ぶべき非現実的雰囲気で人々の注目の的となる彼女は、「サイバーおかん」こと、タナゴさん。自身が管理する個人サイトには、「日本の文化をハックして新しいエモい日本を生み出す」という一文とともに、彼女の目指す“日本サイバー化促進活動”なる謎の活動の様子が綴られている。

「いわば、サイバーおかんというのは、私がアーティストとして変身したときの姿ですね」(サイバーおかん・タナゴ、以下同)

大阪の高校卒業後、進学先のデザイン専門学校を1日で中退。パチンコを中心とした自堕落な生活を5年間送った後に、『ビックリマンシール』を製作するデザイン会社「グリーンハウス」で1年間、デザイン業務に従事、その後パチスロメーカーのデザイナーを経て独立。現在は、パチンコ、パチスロ等遊技機の図柄や、パネルのデザイン、さらには液晶に流れる文字デザインといったものを制作するフリーデザイナーだ。

しかし、2018年からこれら本業とは別に、サイバーおかんとしての活動を開始。サイバーなアイテムを工作してイベントで出展したり、企業オフィスのサイバー化をプロデュースしたり、さらには正体を隠したヒーローのように、夜な夜な電飾に身を包み、街を練り歩くようになった。なぜいきなりサイバーな活動をするようになったのか。それは2020年に開催が予定されていた東京オリンピックがきっかけだった。

「オリンピックで訪れる訪日外国人に、日本に抱いているイメージ通りのサイバーパンクな街を見せて、『ニッポン、ヤッパリスゴイネ!』と思ってもらいたい。なのに実際はどうか。東京の夜には圧倒的にサイバー感が足りない。『なんだ、この体たらくは!』と腹が立ちましたね」

「日本の夜が暗くなっている」。“サイバーおかん”タナゴが目指す「日本サイバー化計画」ってナニ?_b

「サイバーパンク」とは、1980年代に流行し、今でも根強い人気を誇っているSFのサブジャンル。高度に進化した生体・機械技術が人々の文化に浸透した未来社会を舞台に、人間性を鮮烈に描き出すような作品が多い。そんなサイバーパンクのモデルとしてバブル期日本の高層都市群イメージがよく使われていたのだ。

「日本の夜が暗くなっている」。“サイバーおかん”タナゴが目指す「日本サイバー化計画」ってナニ?_c
実は中学二年生の息子さんがいるというサイバーおかん、「おかん」の肩書きに偽りなし!

「サイバーパンク映画の金字塔『AKIRA』(アニメ映画は1988年公開)はオリンピックを控えた2019年の東京が舞台ですし、同じく金字塔の映画『ブレードランナー』(1982年公開)だって2019年が舞台です。でも、そういう“フィクションと現実の垣根”を揺さぶるような試みは日本でいつまで経っても登場しなかった。じゃあ、もう自分でやるか、と」