ベビーカーよりペット用カートのほうが売れる

日本人女性と結婚した40代の韓国人男性Bさんも「韓国では組織(会社)の中でずっと結果を残していかないといけません。あのサムスンですら、部長になれないままだと40代で会社に自分の席がなくなると言われています。必然的に労働時間も長く、子育ても難しい状況になっているんです」と話す。

日本人女性と結婚したBさん(撮影/集英社オンライン)
日本人女性と結婚したBさん(撮影/集英社オンライン)

「女性が一度でも産休を取ったら出世競争を勝ち抜くのは難しいでしょう。それで出生率が下がっているんじゃないかな。最近では気軽に育てられるワンちゃんやネコちゃんが人気で、ベビーカーよりペット用カートのほうが売れているとも聞きますし……」(Aさん)

実際、企業のワークライフバランスに向けた取り組みに関する2022年の調査では、育児休業の取得の有無を、昇進とはまったく無関係に取り扱うとする企業は全体の30.7%にとどまるとの結果が出ている。

また、市民団体「職場パワハラ119」の今月3日の発表では、女性会社員が昇進の直前に「あんた、昇進した後に妊娠したり育休を取ったりして会社を裏切らないだろうな」と男性上司に恫喝されたエピソードが紹介された。

新大久保周辺で話を聞いた(撮影/集英社オンライン)
新大久保周辺で話を聞いた(撮影/集英社オンライン)

同団体の調査では女性会社員の4割が「同じ仕事をしながら男性と給料で差がつけられた経験がある」と回答。男女を問わない厳しい競争の中で不利な状況に置かれている女性には、子どもを産むことがキャリアの断絶に直結する現実がある。

「ソウルで暮らすならクビを切られる心配がない公務員、鉄道、水道、電気などの公共企業に勤めている家庭でなければ子どもを何人も作ろうとは思わないでしょう」とBさんは話す。

職場パワハラ119が1000人を対象に行った「少子化解決のために必要な政策は何だと思うか?」というアンケート調査によると、回答者の2割が「夫婦両方について育児休業を(政府が)義務付けること」と答え、最も多かった。

政府が子育て環境を整えるよう強制力を発動しなければ、企業の自主的な取り組みでは子育てはできないと考えている人が多い。