GMS業態の限界の見極めで明暗が分かれた

これだけ聞くと「西友は先見の明があり素晴らしい」という声も出てきそうだが、実情はそれほど調子のよいものではなかった。

「出店過剰で競合も激しく、勝ち抜くのは容易ではありません。西友の既存店舗は老朽化が進み、減価償却が終わったところも多かったですが、黒字化は難航。現にウォルマート傘下後の西友は、決算の公表をやめていることから再建が思うようにいかなかったのでしょう。

けっきょく2020年にウォルマートは、西友の株式を売却し、事実上、日本市場から撤退しているので、最後まで西友の立て直しは図れなかった。ですが今のイトーヨーカ堂の現状を顧みるに、早い段階でGMSから撤退し、食品スーパー路線に移行した点は評価すべきです」

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イトーヨーカ堂のGMSからの撤退は遅きに失し、経営再建の進捗状況もなかなか進まなかった。これに対し、西友の奮闘はポストGMS時代の生き残り戦略としては理に叶った策と言えるかもしれない。

そんな両社の今後だが、西川氏としてはどのように推移していくと考えるのだろう。

「西友はウォルマート傘下時代のノウハウも蓄積されていますし、楽天との協業も継続しているので、安定した経営を行っていけるかもしれません。ただしイトーヨーカ堂は、脱GMS路線に有効な施策を打てないまま今日に至ったので、店舗数をますます減らしていく可能性が高い。

現在、イトーヨーカ堂が力を入れている首都圏は、『オーケー』『ロピア』『ドン・キホーテ』といったディスカウントストアの勢力が大きく、とても太刀打ちできるとは思えません。最悪の場合、事業の分離・売却といった線も現実的になるでしょう」

取材・文/文月/A4studio 写真/shutterstock